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英語を勉強している時、誰もが一度は壁にぶつかる。
あなたは一所懸命に学習しているにもかかわらず、英語力の向上が実感できず困っていないだろうか? あるいは、今の勉強法でいいかわからず、新しい方法を試そうか迷っていないだろうか?
筆者は社会人向けの英語スクールを運営しているが、勉強方法に関する相談をよくいただく。悩みの多くは解決可能であり、少しの工夫で驚くほど英語が上達する場合がある。
この記事では、英語が上達しない時によくある7つの原因とその解決策を紹介したい。あなたの英語学習に役に立つはずだ。
1. 英語について学んでいるが、英語そのものを練習していない
英語の上達に苦戦する学習者は、「英語について」はよく学んでいるものの、「英語そのもの」を伸ばそうとしていないことが多い。
例えば、長文読解を行う時、「このto不定詞は名詞的用法だろうか、それとも形容詞的用法だろうか」とか、「関係代名詞thatはwhichに書き換え可能だろうか」など、些細な点ばかり気にしてしまう。
もちろん、正確な文法を身につけるのは良いことだ。一方、「分析」だけでは使える英語は身につかない。英語ができるようになるには、文章の意味内容を理解するようにしたい。
英語学習を「英語について」から「英語そのもの」へと発展させる一つの方法が多読である。多読は文字通りたくさんの本を読んで学ぶ勉強法で、表面的な構造よりも英文の内容に意識が向くようになる。
多読のやり方は別記事で解説している。ぜひとも挑戦してみてほしい。
2. 日本語訳にこだわりすぎている
英語上達に苦戦する原因の2つ目が、日本語訳に依存しすぎる学習法にある。
あなたは英文を読む時、英語と日本語訳を一行ずつ対比させながら読んでいないだろうか。そして、訳の解釈に戸惑い、そこで学習が止まっていないだろうか。
例えば、All information will be treated confidentially.を直訳すれば、「すべての情報は秘密に扱われるだろう」になる。
ただ、日本語では「だろう」と言わなくても未来を表せるので、「すべての情報は秘密に扱われます」と訳されることもある。
この時、「未来を表す助動詞willが使われているのに、なぜ『扱われます』なのか」と考えても仕方ない。これは日本語の問題であり、英語の解釈が変わるわけではない。
日本語訳は内容理解に役立つが、翻訳家を目指す人を除けば、訳に対して厳密になりすぎる必要はない。私たちは英語の勉強をしているのだから、日本語訳よりも英文を読む時間を増やそう。
3. 英語学習に不安を感じている
英語学習に不安を感じると、上達が抑制される原因となる。
不安には様々な種類があるが、英語学習に関して言えば以下の3つが代表的である:
- 「TOEIC600点を取れなかったらどうしよう」といった目標達成に対する不安
- 「英語が伝わらなかったらどうしよう」といったコミュニケーションに対する不安
- 「英語ができず人事に影響が出たらどうしよう」といった社会評価に対する不安
不安を消し去るのは難しい。「不安をなくしましょう」と言われ、「それでは今日から不安をなくします」とはいかない。不安があるのは誰もが同じだから、大切なのはそれをコントロールする技術である。
不安に対処する一つの方法に事前準備がある。TOEIC本番試験に不安があれば、失敗をしないように入念な準備をしよう。「やりきった!」と思えるほど学習をすれば、不安な気持ちが軽減されるはずだ。
不安は学習のきっかけと捉え、上手に付き合っていくようにしたい。
4. 勉強したことだけを身に着けようとしている
英語は学んだことが直ちに身につくとは限らない。理解したつもりでも忘れることはあるし、逆に無意識のうちに学習している能力もある。
例えば、aやtheなどの冠詞は中学校で習う範囲だが、用法が複雑なため、日本人にとってもっとも習得が難しい文法の一つだろう。上級者でも最後まで間違えるのが冠詞である。
逆に、TOEICを解くにあたり、難易度の高い設問を飛ばして後回しにするなどの戦略は、たとえ直接的に習ったことがなくても、受験経験を積めば無意識に習得する。
このように、「学習」と「習得」を分けると英語上達に悩む原因が見えてくる。学習内容をすぐに忘れてしまっても、それは脳が「今は不必要」と判断していると解釈しよう。
勉強したことだけを身に着けようとすると、潜在的な英語力向上に気が付かず、自己評価を下げる結果に成りかねない。英語に真剣な人ほど陥りがちなので注意したい。
5. 十分な学習時間を確保していない
英語の上達には時間がかかる。
次の図はTOEICスコアを上げるのに必要な勉強時間を表す。縦軸が現在のTOEICスコア、横軸が目標スコアで、2つの軸が交わる点が必要な勉強時間だ。
目標スコア | ||||||
現在のスコア |
450 | 550 | 650 | 750 | 850 | 950 |
350 | 225 | 450 | 700 | 950 | 1,225 | 1,550 |
450 | – | 225 | 450 | 700 | 975 | 1,300 |
550 | – | – | 225 | 450 | 725 | 1,050 |
650 | – | – | – | 225 | 500 | 825 |
750 | – | – | – | – | 275 | 600 |
850 | – | – | – | – | – | 325 |
(出典: Saegusa 1985)
例えば、現在のスコアが450点の学習者が650点を目指すと、必要な勉強時間は450時間だ。月に50時間の学習時間を確保できたとして、それをコンスタントに続けて9ヶ月必要ということになる。
私たちは往々にして願望と現実を混同する。
「スキマ時間だけで英語ができるようになりたい」の願望を、「スキマ時間だけで英語ができるようにるはずだ」と錯覚してしまい、「勉強しているのに英語が上達しない」と悩んでしまっていないだろうか。
英語習得は誰もが成功しないからこそ価値がある。上達に悩んだら学習計画の見直しをしてみよう。
6. 勉強に集中していない
学習時間を十分に取っても成果が出ない場合、勉強に集中していないおそれがある。
あなたは英語の勉強中、次のような状態になっていないだろうか?
- 勉強中に居眠りをしてしまう。
- 勉強をはじめてもすぐに飽きてスマートフォンを見てしまう。
- 頬杖をつくなど、勉強に対して体が拒否反応を示している。
- 2時間カフェに滞在しても、勉強に集中するのは実質20分。
- 1冊の問題集を終えるのに数ヶ月かかる。
英語の勉強は地味な作業が多く、成果がすぐに出るとは限らないため、前向きな気持ちになれないのはよくわかる。筆者も英語学習に集中して取り組めるようになるまで、かなりの年月を要した。
ただ、英語学習は決して苦行ではない。一度上達の喜びを感じられると、もっと勉強しようという気になり、学習が捗る…という正の循環に入る。
勉強に集中できない場合、英語学習の目標を思い出そう。そして、小さな上達を評価するようにしよう。英語に「楽しさ」を感じられるようになれば、あなたの学習は成功だ。
7. スマートフォンアプリだけで学習している
テクノロジーの発達が著しい現在、スマートフォンで英語のできるアプリが増えている。筆者は、アプリで学習をするのは、初心者が英語に慣れるのに有効な手段であると考えている。
一方、スマートフォンのみで英語学習を成功させるのは難しい。アプリは単語、文法、リスニング、英会話フレーズなど特定のジャンルは豊富にリリースされているが、画面の大きさに制約があるせいか、長文読解やライティングの学習には不向きである。
将来、紙の書籍がなくなり、スマートフォンだけで英語を学べる日が来るかもしれない。そうした未来を考えるのはワクワクするが、今はまだアプリは紙の書籍の補完財といった感じである。技術の進化を期待したい。
まとめ: 英語を上達させるポイントは続けること
この記事では、英語が上達しない7つの原因とその対処法を紹介してきた。
内容をまとめると次のようになる。
- 英語について学んでいるが、英語そのものを練習していない
- 英文の内容を十分に理解していない
- 英語学習に不安を感じている
- 勉強したことだけを身に着けようとしている
- 十分な学習時間を確保していない
- 勉強に集中していない
- スマートフォンアプリだけで学習している
筆者の経験上、英語はある日突然「できる!」と感じる時がある。洋書のような難しい英文が読めるようになったり、リスニング音声の内容が急に理解できたりと、英語が「腑に落ちる」瞬間がやってくる。
英語を上達させる最大のポイントは続けることである。学習を止めたらそれ以上伸びることはないが、勉強を継続する限り、どんな人にもチャンスは必ず訪れる。
学習の参考になれば幸いだ。
Good luck!