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英語の固有名詞とは、人や場所などの固有の名称をあらわす語である。
代表的な固有名詞にSteve Jobs(スティーブ・ジョブズ)やTokyo(東京)などがある。
英語を勉強しているあなたは、次のような疑問を持っていないだろうか?
- 固有名詞の使い方がわからない…
- 固有名詞と他の名詞の違いを知りたい…
- 固有名詞が文中に出た場合の見分け方を知りたい…
そこでトイグルでは、英語の固有名詞について詳細を解説していく。学習の参考になるはずだ。
1. 固有名詞は特定の人・物・場所等の名前をあらわす
固有名詞の特徴を端的にあらわせば、それは「特定の人・物・場所等の名前をあらわす名詞」である。固有名詞の具体的な例を見ていこう。
Susan(スーザン)のような人名は固有名詞である。人名はTaro Yamada(山田太郎)のような「姓名」の場合や、Barack Hussein Obama II(バラク・フセイン・オバマ2世)のようなミドルネームを含むこともある。
Microsoft(マイクロソフト)のような会社名も固有名詞である。同様の例に、Sony(ソニー)、Toyota(トヨタ)、Apple(アップル)、General Motors(ゼネラル・モーターズ)などがある。
London Bridge(ロンドン・ブリッジ)のような建物の名前も固有名詞である。他にも、Stanford University(スタンフォード大学)などの大学名などが固有名詞になる。
Japan(日本)のような国名も固有名詞である。他にも、New York(ニューヨーク)のような都市名、Michigan(ミシガン)などの州名が固有名詞になる。
Christmas(クリスマス)のような特定の時間の名前も固有名詞として使われる。他にも、Monday(月曜日)などの曜日、January(1月)などの月、Easter(イースター)などの祭日の名前は固有名詞である。
Mount Everest(エベレスト)のような山を表す語も固有名詞である。他にも、Antarctica(南極大陸)などの大陸、Great Slave Lake(グレートスレーブ湖)のような湖、Santa Clara Island(サンタ・クララ島)などの島が固有名詞である。
2. 固有名詞の使い方
- (1) The Nintendo 3DS is a portable game console produced by Nintendo. (ニンテンドー3DSは任天堂によって生み出された持ち運びできるゲーム端末です)
固有名詞は通常の名詞と同様に、主語、補語、目的語といった位置に使われる。(1)はThe Nintendo 3DS(ニンテンドー3DS)が主語、Nintendo(任天堂)が前置詞の目的語に使われている例である。
固有名詞の文法的な特性は、次のとおり。
- 常に大文字ではじめる
- 不定冠詞a/anをつけない
- 複数形にならない
尚、The Nintendo 3DS(ニンテンドー3DS)のように、固有名詞にTheをつけることがある。詳しくは『参考: theをつける固有名詞』で述べる。
3.固有名詞の普通名詞化
これまで述べたように、固有名詞をそのままの意味で用いる場合、不定冠詞a/anや複数形を取らない。
しかし、固有名詞に不定冠詞a/anをつけたり、複数形にすることで、普通名詞化して使うことがある。以下、その用法を見ていこう。
3-1.「〜という人」の意味
- (2) There’s a Mr Scott here to see you. (スコットさんという人が会いに来ていますよ)
- (3) We have four Johns in our class. (クラスにジョンという人が4人いる)
固有名詞に不定冠詞a/anをつけると、「〜という人」の意味になる。(2)は「スコットさんという人」の意味である。
固有名詞を複数形にすれば、その名前を持つ人・物が複数存在することを示唆する。(3)はジョンという名前の人が4人いることを示している。
3-2.「〜のような人」の意味
- (4) We need a Donald Trump here. (ドナルド・トランプのような人がここに必要だ)
固有名詞に不定冠詞a/anをつけると、「〜のような人」の意味で解釈されることがある。(4)はドナルド・トランプのような性質を持った人がここに必要だ、の意味である(ドナルド・トランプ本人を指すわけではない。)
3-3.「〜家の人」の意味
- (5) My mother was a Miller. (私の母はミラー家出身でした)
人名を表す固有名詞に不定冠詞a/anをつけると、「〜家の人」の意味になることがある。
3-4.「〜の作品」の意味
- (6) I can’t afford to buy a Picasso. (私はピカソの作品を買う余裕はない)
芸術家などを表す固有名詞に不定冠詞a/anをつけると、「〜の作品」の意味になることがある。
3-5.「〜の製品」の意味
- (7) I bought a Toyota. (私はトヨタの車を買った)
- (8) I’ve had other Toyotas. (私は他のトヨタの車を所有している)
会社やメーカーなどを表す固有名詞に不定冠詞a/anをつけると、「〜の製品」の意味になる。複数形でも同様に「〜の(複数の)製品」の意味になる。
参考: theをつける固有名詞
固有名詞の中には、義務的に定冠詞theを伴うものがある。例えば、国の名前を表す時、日本はJapanと言うが、フィリピンはthe Philippinesという。
theを伴う固有名詞は、集合体のことが多い。例えば、the Philippines(フィリピン)は7,000以上の島々から成る国家である。
一方、単一のものから成る固有名詞であっても、定冠詞theがつくことがある。例えば、The Economist(エコノミスト/イギリスの経済誌)は定冠詞theが必須である。
英語のネイティブ・スピーカーは、ある固有名詞にtheが必要かどうかについて、ほとんど直感的に判断できるようである。そして、本来あるべきところにtheがなかったり、逆に不必要な箇所にtheがあると、それを(私たちが想像する以上に)重大な文法ミスと感じる。
私たち学習者(= 英語の非母語話者)にとって、ある固有名詞にtheが必要かどうか、予備知識なしに判断するのは難しい。そこで、英語を書いたり話したりする機会がある場合、固有名詞にtheが必要かどうか、できる限り事前に調べておくことが望ましい。
固有名詞は辞書を使えば調べられる。例えば、Philippineを学習英和辞書で引けば、次のようにある:
- エースクラウン英和辞典: the Philippines (フィリピン諸島, フィリピン共和国)
- ジーニアス英和辞典: [the〜s: 単数扱い] (フィリピン諸島, フィリピン共和国)
いまはインターネットも活用できる。例えば、「グランドキャニオン国立公園」にtheが必要かどうか迷った場合、これをWikipediaで調べれば、Grand Canyon National Parkと出てくる(theは必要ない。)
まとめ
この記事では、英語の固有名詞について詳細を解説してきた。
内容をまとめると次のようになる:
- 固有名詞は人・物・場所の名前をあらわす
- 固有名詞は常に大文字ではじめる
- 固有名詞は不可算名詞扱い
- 固有名詞を普通名詞として用いる場合がある
- 固有名詞に定冠詞theをつける場合がある
トイグルでは他にも、英文法に関する記事を執筆している。興味のある方はぜひご覧いただきたい。
Good luck!
(「ニンテンドー3DS」は任天堂株式会社の商標です。)
「ロイヤル英文法」の固有名詞の項目を読んでおり、以下のようにコラムが書かれていました。
No more Hiroshimas!「広島の惨劇は繰り返すな」という意味なので、Hiroshimas と複数形になる。人名でも No more Hitlers. と言えば、「ヒットラーのような独裁者をもう出すな」ということになる。
この固有名詞の複数形は、このサイトの 3-2.「〜のような人」のような用法 と捉えて、以下のようになっているという理解で良いのでしょうか?
Hiroshimas (広島のような都市), Hitlers(ヒットラーのような人)という意味で、固有名詞が普通名詞化している。
no more 「それ以上~ない」なので、No more Hiroshimas. で「これ以上広島のような都市は無い」⇒「広島の惨劇は繰り返すな」
a + 固有名詞 で「〜のような人」しか英文法書などには載っていなかったので、この認識で正しいのか気になりました。
>大学生様
手元の文法書をいくつか見てみましたが、この用法について、明確な説明をしているものは見当たりませんでした。
唯一、 『英語基本 形容詞・副詞辞典』は「『…はもうごめんだ』の意で用いられることがある」と述べていますが(p1129)、固有名詞の普通名詞化といったところまでは踏み込んでいません。
ただ、ご指摘の解釈には一定の説得力はあると思います。
No more Hiroshimaと単数形にすると「広島はもう存在しない」の意味になってしまう。
出典:英語基本形容詞・副詞辞典
No more Hitler. のように単数形を置くと、「ヒットラー(個人)にはもううんざりだ」という意味
ふと思ったのですが、no more A は、more があるので、Aが可算名詞なら複数形、不可算名詞なら単数形を取るはずです。
no more Hitler や no more Hiroshima の Hitler と Hiroshima はどのような扱いなのでしょうか?
more は固有名詞の前に置けないと思うのですが、、
>大学生様
「moreは固有名詞の前におけない」が確かであるか検証する必要はあります。
ただ、仮にそうであるとすれば、No more Hiroshimas.などは、「固有名詞の普通名詞化」と解釈すれば、辻褄は合うことになりますね。
ありがとうございます。
確かに、固有名詞は不可算名詞ですから、more 固有名詞 が成り立つとすれば、more 単数 ということになりますよね
Hiroshima や Hitler が固有名詞ではなく一般の不可算名詞化していて、「広島という地域」や「ヒトラーの独裁」という本人自体ではなく、その状況を表すものと考えても成り立ちそうです
やはり、No more 複数/単数 という用法として、覚える他ないということでしょうか
追記
ジーニアス英和などに、No more Mr. Nice Guy 「良い男でいるのはもう勘弁だ」「良い男なのはもうウンザリだ」という例文が載っていました。
No more 単数 の用法として成立しているということのようですね
(文法的な理解はどうなっているのかはわかりませんが…)
>大学生様
本用法ですが、厳密に言えば、固有名詞がどういった扱いになるかなどは議論の余地があります。
ただ、この辺りは英文法を超えて、統語論と呼ばれる分野の範囲になります。
当方は統語論に関してはまだ学習が十分に進んでいないので、現時点では「No more+固有名詞が『…はもうたくさんだ』の意味になる」ぐらいの感覚でいるようにしています。
(経験上、あまり「分析」をしすぎると、かえって使い方がわからなくなることがありますね…)