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英語の分化複数とは、複数形になったとき、単数形にはない別の意味を持つものを言う。
たとえば、workは「仕事」の意味の単数形だが、複数形のworksは「工場」の意味になる。
この記事では、英語の分化複数について、例をあげながら使い方を説明する。学習の参考になるはずだ。
1. 分化複数は単数形と異なる意味を持つ複数形
英語の一部の名詞は、単数形から複数形になると、単数には存在しなかった新たな意味が加わることがある。例を見てみよう。
- sand(砂/単数形)- sands(砂浜/複数形)
- glass(ガラス/単数形)- glasses(メガネ/複数形)
単数形のsandは「砂」、複数形のsandsは「砂浜」である。厳密に考えると、砂の集まりは「砂山」になっても、「砂浜」にはならない。
ここで登場するのが比喩(メタファー)である。複数形sandsが「砂浜」と解釈されるのは、「複数の砂→砂のたくさんある場所」のように意味が拡張した結果である。
単数形のglassは「ガラス」、複数形のglassesは「メガネ」である。「ガラス」の意味のglassは不可算名詞なので、このまま複数形にすることはできない。
それでも、glassesが「メガネ」と解釈されるのは、「(製品としての)ガラス→ガラスを主要部品とするもの→メガネ」と意味が拡張したからである。メガネは2枚のレンズによって成り立つ製品なので、glassesのように、常に複数形で使う。
このような、単数形と異なる意味を持つ複数形は分化複数と呼ばれる。分化複数の多くは、比喩による意味の拡張によって起こるものである。
2. 分化複数の実例
2-1. air(空気)とairs(気取った態度)
- (1) Reducing air pollution could save millions of lives. (大気汚染をへらすことは何百万もの命を救うかもしれない)
- (2) Don’t put on airs. (気取った態度を取らないで)
単数形のairは「空気/大気」の意味で用いられる。(1)のair pollutionは「大気汚染」の意味である。
複数形のairsにすると「気取った態度」の意味になる。これは「空気→雰囲気→気取った雰囲気(態度)」へと意味が変化した結果である。(2)のput on airs(気取った態度を取る)のように、イディオムで使われることが多い。
2-2. custom(風習)とcustoms(税関)
- (3) I’m not familiar with the local custom. (私は地元の風習に慣れていない)
- (4) You will have to go through customs at JFK. (ジョン・F・ケネディ国際空港で税関を通らなくてはなりません)
単数形のcustomは「風習」の意味で用いられる。(3)のlocal customは「地元の風習」の意味である。
複数形のcustomsにすると「税関」の意味になる。これは「社会的な慣習→税の慣習→税関」へと意味が変化した結果である。
注: JFKはジョン・エフ・ケネディ国際空港の略
2-3. duty(義務)とduties(関税)
- (5) It is my duty to look after my children. (子供の面倒を見るのは私の義務です)
- (6) Your orders may be subject to import duties. (あなたの注文には輸入関税が課せられるでしょう)
単数形のdutyは「義務」の意味で用いられる。複数形のdutiesにすると「関税」の意味になる。
2-4. effect(影響)とeffects(所持品)
- (7) The effect of television on children has been debated. (子供へのテレビの影響が議論されている)
- (8) No valuable personal effects should be brought onto the camping areas. (高価な個人の所持品はこのキャンプ場に持ち込みできません)
単数形のeffectは「影響」の意味で用いられる。複数形のeffectsにすると「所持品」の意味になる。
2-5. good(利益)とgoods(商品)
- (9) We will provide the best solution for the good of the world. (我々は世界のために最高の解決策を提供する)
- (10) Some shops sell second-hand goods. (中古品を売っているお店がある)
単数形のgoodは「利益/ため」の意味で用いられる。これは形容詞goodの「良い」の意味がそのまま名詞になったものと考えられる。
複数形のgoodsは「商品」の意味で用いられる。これは「良い→役に立って良い→(役に立って良い)商品」へと意味が変化した結果である。
2-6. letter(文字/手紙)とletters(文学)
- (11) Capitalize the first letter of every word. (各語のはじめの文字を大文字で書きなさい)
- (12) Writing a business letter takes planning. (ビジネスレターを書くことは計画を要する)
- (13) John was a man of letters. (ジョンは文学者です)
単数形のletterは「文字」がもっとも中心的な意味である。letterは「文字→文字で綴った書類 = 手紙」の意味でも用いられる。
複数形のlettersは「文学」の意味になる。これは「文字で綴った書類→文学」へと意味が変化した結果である。
2-7. look(ちらっと見ること)とlooks(容姿)
- (14) I took a look at your website. (私はあなたのウェブサイトをちらっと見ました)
- (15) Which is more important: good looks or personality? (良い容姿と人格のどちらがより重要ですか?)
単数形のlookは「ちらっと見ること」の意味である。take a look(ちらっと見る)のようなイディオムで使われることが多い。複数形のlooksは「容姿」の意味である。
2-8. manner(方法)とmanners(行儀)
- (16) The whale has evolved in a different manner. (クジラは異なる方法で進化した)
- (17) In tearoom it is good manners not to wear a watch. (喫茶室では時計をつけないのが良いマナーです)
単数形のmannerは「作法」、複数形のmannersは「行儀」の意味である。もともとの意味は「手」であり、「手の動かし方→作法→行儀」と変化した。
2-9. premise(前提)とpremises(建物)
- (18) A false premise will lead to a false conclusion. (誤った前提は誤った結論を導く)
- (19) We moved to larger premises in Park Road. (私たちはパーク通りのより大きな建物に引っ越した)
単数形のpremiseは「前提」、複数形のpremisesは「建物/敷地」の意味である。premisesはTOEICにもよく出現するので、受験予定のある方は覚えておきたい。
2-10.quarter(4分の1)とquarters(宿舎)
- (20) A quarter of the UK population will be over the age of 65 by 2032. (2032年までにイギリスの人口の4分の1は65歳を超えるだろう)
- (21) There are 12 living quarters attached to the temple. (そのお寺に付属の12の住居がある)
単数形のquarterは「4分の1」、複数形のquarterは「宿舎」の意味である。「4分の1→一般に特色のある場所→宿舎」と意味が変化したと言われる。
3. まとめ
この記事では、英語の分化複数について詳細を解説してきた。
内容をまとめると次のようになる:
- 分化複数は単数形と異なる意味を持つ複数形
- 分化複数は多くの場合、意味が比喩的に拡張されたもの
- 分化複数の例にwork(仕事)とworks(工場)がある
トイグルでは他にも、英文法に関する記事を執筆している。興味のある方はぜひご覧いただきたい。
Good luck!
(本記事で紹介した語の意味の拡張は『英語多義ネットワーク辞典』を参考にした。)