英語の脱落とは、通常は発音される音が、前後の音や話し方の影響で現れなくなることです。たとえば next day の /t/ が省かれ、/neks deɪ/ のように聞こえる場合があります。聞こえない文字を当てずっぽうに消すのではなく、起こりやすい環境と、音を残す場合の両方を知ることが大切です。
音声はアメリカ英語をモデルにした学習用の合成音声です。各項目の後に、続けて発音する間があります。男性・女性のどちらかで練習し、慣れたらもう一方でも確認しましょう。
1. 仕組みと、間違えやすいポイント
子音が続くところでは、/t/ や /d/ が省かれることがあります
next day の /kst d/、old friend の /ld f/ のような子音の連続では、/t/ や /d/ が現れない発音があります。語末の /t/ と /d/ がすべて消えるわけではありません。前後の音、話す速さ、強調の有無、話者によって変わります。
弱い母音が省かれて、音節数が減る場合もあります
different や camera には、弱い母音を発音する形と、省いて短く読む形があります。綴りに母音字があるからといって、いつでも一字につき一つの母音を出すわけではありません。複数の発音が辞書に載る語は、どちらか一方だけを誤りとしないようにしましょう。
強調しない代名詞などでは、/h/ が現れないことがあります
tell him、give her などでは、him や her を強調しない場合に /h/ が省かれることがあります。文頭で明確に発音する場合や、人物を対比して強調する場合には /h/ が現れます。綴りの h をいつでも読まないという規則ではありません。
破裂が聞こえないことと、音が完全に消えることは違います
語末の /t/ では、舌先を歯茎につけたまま、はっきりした破裂を出さないことがあります。また、声門で止める発音や、米語のフラップ音になる場合もあります。耳で「ト」と聞こえないだけで、必ず脱落だと判断しないようにします。
黙字や文法上の省略とは区別します
knife の k は、単語をゆっくり読んでも通常は発音しない黙字です。一方、I think that it is useful. の that を文から省くのは、文法上の省略です。どちらも、前後の音の影響で音声が脱落する現象とは分けて考えます。
まず聞き取る力をつけ、無理に音を消さないようにします
脱落を知ると、知っている単語が会話で別の形に聞こえる理由を理解しやすくなります。ただし、自分が話すときに、すべての例で音を落とす必要はありません。特に過去形・否定・数などの意味を伝える音を、速く話すためだけに削らないようにしましょう。
2. どの音が省かれるかを対応させる
next day
/nekst deɪ/ → /neks deɪ/
子音が続く環境で、/t/ が現れない例です。
old friend
/oʊld frend/ → /oʊl frend/
/d/ を省いた発音の例です。
tell him
/tel hɪm/ → /tel ɪm/
him を強調しない場合の /h/ の脱落例です。
矢印は音や文字の対応を示す学習用の図です。実際の発音には、話者・場面・前後の音による違いがあります。

next week を練習するときは、先に /t/ を残した形で語の構造を確かめ、その後で省かれる形を聞き比べると、綴りと音の対応を見失いにくくなります。最初から文字を消して覚える必要はありません。
3. 音を残す形と、省いた形を聞き比べる
各組は同じ語句を2回読みます。1回目は /t/ または /d/ を残した形、2回目は省いた形です。違いを分かりやすくするため、発音記号を指定した学習用の比較音声です。実際の会話では、この中間のような弱い発音もあります。
音声の順序:next day → next day → old friend → old friend → must go → must go
男性音声
女性音声
4. 基本の形を練習する
太字は、この練習音声で省かれる部分の手がかりです。発音する部分を強調した表ではありません。発音記号の括弧は、その音を残す場合もあることを示します。
4-1. 子音が続く環境での /t/・/d/
この音声では、括弧で示した /t/・/d/ を省いた発音例を読みます。音を残す発音も可能です。
next day /neks(t) deɪ/
翌日
練習のポイント:/t/ を残す形と、省いた形を対応させます。
last night /læs(t) naɪt/
昨夜
練習のポイント:最後の night の /t/ まで一律に消すわけではありません。
old car /oʊl(d) kɑːr/
古い車
練習のポイント:/d/ を省く場合があります。
must go /mʌs(t) ɡoʊ/
行かなければならない
練習のポイント:/s/ から次の /ɡ/ へ続ける例です。
just now /dʒʌs(t) naʊ/
たった今
練習のポイント:/t/ が現れない例を確認します。
男性音声
女性音声
4-2. 弱い /h/・母音などの脱落
ここでは、音を省いて短く読む形を聞きます。すべての話者・場面で同じ形になるわけではありません。
tell him /tel ɪm/
彼に伝える
練習のポイント:弱い him で /h/ が現れない例です。
give her /ɡɪv ər/
彼女に与える
練習のポイント:米語のRを残します。
bread and butter /bred ən ˈbʌtər/
パンとバター
練習のポイント:and を /ən/ と短くする例です。
different /ˈdɪfrənt/
違った
練習のポイント:弱い母音を省いた形です。
camera /ˈkæmrə/
カメラ
練習のポイント:二音節で読む形です。
男性音声
女性音声

過去の話をしているのに、語尾を全部弱くしてしまうと、時制が伝わりにくくなる場合があります。まず意味が明確に伝わる読み方を作り、自然な流れの中で起こる変化を知る順序で練習しましょう。
5. フレーズで練習:短いまとまりを5つ
音声は1番から5番の順です。単語の間を必要以上に空けず、意味のまとまりとして読みます。
1. next week
来週
練習のポイント:/t/ を省いた例を練習します。
2. last month
先月
練習のポイント:/s/ から /m/ へ続けます。
3. an old friend
昔からの友人
練習のポイント:/d/ を省いた例を確認します。
4. must be tired
疲れているに違いない
練習のポイント:/s/ から /b/ へ進みます。
5. just now
たった今
練習のポイント:/t/ がない形と綴りを対応させます。
男性音声
女性音声
6. 文で練習:会話で使える5文
以下の音声は、太字の /t/ または /d/ を省いた発音を、記号を指定して作った学習用の例です。音を残す読み方でも構いません。内容を保ちながら、二つの形を対応させて聞いてください。
1. I’ll see you next week.
また来週お会いしましょう。
練習のポイント:next の /t/ を省いた例です。
2. We met last month.
私たちは先月会いました。
練習のポイント:last の /t/ を省いた例です。
3. He is an old friend.
彼は昔からの友人です。
練習のポイント:old の /d/ を省いた例です。
4. You must be tired.
お疲れでしょう。
練習のポイント:must の /t/ を省いた例です。
5. I saw her just now.
たった今、彼女を見かけました。
練習のポイント:just の /t/ を省いた例です。
男性音声
女性音声
7. 仕上げの練習とセルフチェック
練習した文から2つを選び、音声を止めて発音してみましょう。録音できる場合は、お手本と自分の声を交互に聞きます。声の高さを似せる必要はありません。
- どの音が省かれる例なのか分かりますか。
- 破裂が弱いだけの音を、必ず脱落だと決めつけていませんか。
- 時制や否定など、伝える意味を保っていますか。
聞き取れなかった箇所は、綴りを確認してからもう一度聞きます。難しい場合は短いまとまりに戻り、最後に文全体へ戻してください。
関連する発音も学ぶ
弱形・リンキング・黙字と比べると、音が弱くなる場合、つながる場合、綴りの文字を通常読まない場合を区別できます。
母音・子音・音変化などの解説と練習記事は、英語の発音まとめに一覧で掲載しています。
参考資料
- British Council:Connected speech — part 2
- UCLA:英語の子音と音の変化
- Cambridge Dictionary:different
- Cambridge Dictionary:camera