英語の弱形とは、冠詞・前置詞・助動詞などの語に強勢を置かず、短く弱く発音するときの形です。たとえば can には、強形 /kæn/ に対して、文中でよく使う弱形 /kən/ があります。単に音量を下げるだけでなく、母音の響きや音の長さが変わることがあります。この記事では、米国英語を基準に、口の図解と男女の音声で「基本の形 → フレーズ → 文」の順に練習します。
音声はアメリカ英語をモデルにした学習用の合成音声です。各項目の後に、続けて発音する間があります。男性・女性のどちらかで練習し、慣れたらもう一方でも確認しましょう。
1. 仕組みと、間違えやすいポイント
よく使う強形・弱形の早見表
米国英語で使う代表例です。矢印の左が強形、右が弱形の例です。弱形は一つとは限らず、強調の有無や前後の音によって変わります。
| 語と働き | 強形 → 弱形の例 |
|---|---|
| a(冠詞) | /eɪ/ → /ə/ |
| an(冠詞) | /æn/ → /ən/ |
| the(冠詞) | /ðiː/ → /ðə/(子音の前の基本形) |
| to(前置詞など) | /tuː/ → /tə/ |
| of(前置詞) | /ʌv/ → /əv/ |
| for(前置詞) | /fɔːr/ → /fər/ |
| and(接続詞) | /ænd/ → /ənd, ən/ |
| can(助動詞) | /kæn/ → /kən/ |
| have(助動詞) | /hæv/ → /həv, əv/ |
| him(代名詞) | /hɪm/ → /ɪm/(文中で弱く読む一例) |
強形と弱形は、伝える内容に合わせて使い分けます
I can help. の can を特に強調しない場合、/kən/ のように弱く読むことがあります。一方、できることを強調する I CAN help. では /kæn/ を使えます。強形が誤りで弱形が正しいという関係ではなく、文の焦点や場面によって選びます。
/ə/ は、多くの弱形で使われる母音です
a /ə/、to /tə/、and /ənd, ən/ などでは、母音が /ə/(シュワー)になります。唇や舌を必要以上に緊張させず、前後の語へ短くつなぎます。ただし、弱形がすべて /ə/ になるわけではありません。him /ɪm/ のように、別の母音を保つ形もあります。
文字を削除することと、発音を弱くすることは別です
I think that it is useful. の接続詞 that は弱く /ðət/ と読めます。一方、I think it is useful. と that 自体を省くのは、文法上の省略です。また、I like that. の that は指示代名詞で、接続詞の弱形と同じようには扱えません。語の働きも確認しましょう。
前後の音や文中の位置で、形が変わることがあります
the は子音の前で /ðə/、母音の前で /ði/ とする形を基本として練習できますが、実際には話者差があります。to も /tə/ のほか、母音の前などで /tu/ となることがあります。「いつでも同じ弱形」と決めつけず、短いまとまりで確認します。
/h/ をいつでも省くわけではありません
強調しない him、her、助動詞の have などでは、文中で /h/ が聞こえなくなることがあります。tell him /tel ɪm/ はその例です。文頭や特に強調するときには /h/ を残すのが基本です。単語を覚えるときから常に /h/ を削るのではなく、前後の語と一緒に練習しましょう。
文末だから必ず強形、という規則にはできません
Yes, I can. のように助動詞が省略された内容を代表する場合は、強形がよく使われます。一方、I saw him. の文末の him は弱く読まれることがあります。位置だけでなく、語の種類、強調の有無、文の構造を見る必要があります。
米語ではRの響きにも注意します
for、are、her などの弱形を米語で読む場合、/fər/、/ər/、/hər, ər/ のようにRの響きが残る形があります。英国式の説明をそのまま当てはめ、すべてのRを落とさないようにしましょう。
2. 口の形と文のリズムを図で確認する
多くの弱形に使う /ə/ の口の形
下の図の右側が /ə/ です。左側の /ʌ/ と比べ、口や舌を一つの形に固定しすぎず、力を抜いて短く出します。これは /ə/ を含む弱形の練習であり、すべての弱形が同じ口の形になるわけではありません。

- 唇を強く丸めず、あごと舌の力を抜きます。
- 短い /ə/ を出してから、a ticket /ə ˈtɪkɪt/ のまとまりへ進みます。
- a を長く引っ張らず、ticket の最初の音節を目印にして読みます。
強く読む語と、弱くつなぐ語
I CAN help.
can を強調する例:/kæn/
「できる」という点をはっきり伝えます。
I can HELP.
can を弱く読む例:/kən/
help に焦点を置き、can は短くつなぎます。
a CUP of TEA
a /ə/、of /əv/ を弱く読む例
cup と tea を目印に、短いまとまりとして読みます。
矢印は音や文字の対応を示す学習用の図です。実際の発音には、話者・場面・前後の音による違いがあります。

すべての語を弱くすると、伝えたい内容まで分かりにくくなります。まず help や tomorrow など内容を伝える語を明確にし、強調しない can や to などを短くつなぐ順序で練習しましょう。弱形を使うために、文全体を速く読む必要はありません。
3. 同じ文を、強形と弱形で比べる
同じ英文 Go to school. を2回読みます。1回目は to を強く /tuː/ と読む例、2回目は弱く /tə/ と読む例です。1回目は「学校へ」という方向を対比して強調する読み方、2回目は通常の指示として読む場合の一例です。音の違いを聞き比べやすいよう、発音を調整した学習用の合成音声を使っています。
音声の順序:Go to school. → Go to school.
男性音声
女性音声
4. 基本の形を練習する
音声は各項目を上から順に読みます。ここでは単語単独の強形ではなく、短いまとまりの中に現れる弱形を練習します。発音記号も、そのまとまりを弱形で読む場合の一例です。
以下の練習では、青い下線の語が弱形を確認する対象です。強く読む印ではありません。下線のない語にも、場面に応じて弱形が現れることがあります。
4-1. 冠詞・前置詞を含むまとまり
a ticket /ə ˈtɪkɪt/
切符1枚
練習のポイント:a を短く読み、ticket を目印にします。
an apple /ən ˈæpəl/
リンゴ1個
練習のポイント:an の /n/ を次の母音へつなぎます。
the door /ðə dɔːr/
そのドア
練習のポイント:the を短く読みます。
to school /tə skuːl/
学校へ
練習のポイント:to を特に強調しない形です。
a cup of tea /ə kʌp əv tiː/
紅茶1杯
練習のポイント:of の母音を弱く読みます。
男性音声
女性音声
4-2. 助動詞・代名詞などを含むまとまり
can help /kən help/
手伝える
練習のポイント:can の母音を弱くします。
have finished /həv ˈfɪnɪʃt/
終えた
練習のポイント:助動詞 have を強調しない形です。
tell him /tel ɪm/
彼に伝える
練習のポイント:弱い him では /h/ が現れないことがあります。
ask her /æsk ər/
彼女に尋ねる
練習のポイント:弱い her のRを残します。
tea and coffee /tiː ən ˈkɔːfi/
紅茶とコーヒー
練習のポイント:and を短くつなぎます。
男性音声
女性音声

of の /v/ を日本語の「ブ」に変えないようにしましょう。上の前歯を下唇に軽く当て、余分な母音を足さずに次の語へ進むと、a cup of tea のまとまりを作りやすくなります。
5. フレーズで練習:短いまとまりを5つ
音声は1番から5番の順です。単語の間を必要以上に空けず、意味のまとまりとして読みます。
1. a glass of water
水1杯
練習のポイント:glass と water を目印にします。
2. to the station
駅へ
練習のポイント:to を短く、station を明確に読みます。
3. bread and butter
パンとバター
練習のポイント:and を強調せずにつなぎます。
4. can speak English
英語を話せる
練習のポイント:can を短くして、後ろの内容を明確にします。
5. tell him
彼に伝える
練習のポイント:him の /h/ を省いた弱い形を確認します。
男性音声
女性音声
6. 文で練習:会話で使える5文
まず内容を確かめ、次に音声に続いて読みます。速さだけをまねず、意味が伝わるまとまりを保ちましょう。
1. I can help you tomorrow.
明日お手伝いできます。
練習のポイント:can を弱くし、help と tomorrow を明確にします。
2. We need a cup of tea.
紅茶が1杯必要です。
練習のポイント:a と of を短くつなぎます。
3. She went to the station.
彼女は駅へ行きました。
練習のポイント:to を短くして station へ続けます。
4. Please tell him the news.
彼にその知らせを伝えてください。
練習のポイント:him を強調しないで読みます。
5. I bought bread and butter.
パンとバターを買いました。
練習のポイント:and を短くして、二つの名詞を明確にします。
男性音声
女性音声
7. 仕上げの練習とセルフチェック
練習した文から2つを選び、音声を止めて発音してみましょう。録音できる場合は、お手本と自分の声を交互に聞きます。声の高さを似せる必要はありません。
- 伝えたい語を明確にし、強調しない機能語を短くつないでいますか。
- 弱形を小声にするだけでなく、母音の響きや長さも確認しましたか。
- /h/ を省く箇所や、米語のRの響きを確認しましたか。
- Yes, I can. のような応答では、強形を使う場面も区別できますか。
聞き取れなかった箇所は、綴りを確認してからもう一度聞きます。難しい場合は短いまとまりに戻り、最後に文全体へ戻してください。
関連する発音も学ぶ
/ə/ の基本と、短縮形・脱落・リンキングも一緒に学ぶと、短い語が会話の中でどのように聞こえるかを整理できます。
母音・子音・音変化などの解説と練習記事は、英語の発音まとめに一覧で掲載しています。
発音まとめ:母音・子音・音変化の記事一覧から、次に練習するテーマを選べます。
参考資料
- Oxford Learner’s Dictionaries:米国英語の発音と強形・弱形
- British Council:Connected speech — part 1
- English Teaching Forum:弱形の指導と練習方法