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英語の総称表現とは、「Xというものは…である」の意味で、ある種類全体について述べるものである。
たとえば、Rabbits are sensitive animals.(ウサギは敏感な動物である)は総称表現を使った文である。
英語を学習しているあなたは、次のような疑問を持っていないだろうか?
- そもそも、総称表現とは何…?
- 総称表現には3種類あると聞いたが、使い分けがわからない…
- 総称表現とそうでないものを区別する方法を知りたい…
総称表現は市販の参考書でもあまり深くは取り上げられないので、悩んでいる方が多いと思う。そこでトイグルでは、総称表現について詳細を解説していきたい。学習の参考になるはずだ。
1. 総称表現は種類全体をあらわす用法
総称表現について知るには、実際の例を見るのがよい。
次の3つの例文はいずれも総称表現を使った文である。意味は「ライオンは強い動物だ」となるが、ニュアンスが異なる。どのような違いが感じられるだろうか?
- (1) A lion is a powerful animal. (ライオンは強い動物だ)
- (2) Lions are powerful animals. (ライオンは強い動物だ)
- (3) The lion is a powerful animal. (ライオンは強い動物だ)
(1)は不定冠詞aに名詞の単数形が使われている。世界には様々な種類のライオンがいるが、そこから無作為に1匹を選んで「ライオンは強い動物だ」と言っている感覚である。どの1匹にも該当する以上、種全体の共通の特徴ということである。
(2)は無冠詞(= 冠詞なし)の名詞の複数形が使われている。世界の様々な種類のライオン全体を指して、「ライオンは強い動物だ」と言っている感覚である。メンバーすべてに当てはまることから、その種の一般化を試みるものである。
(3)は定冠詞theに名詞の単数形が使われている。様々な種類のライオンからもっとも典型的な例を取り出して、「ライオンは強い動物だ」と言っている感覚である。定冠詞theによって、抽象化されたライオンが想像されている。
このように、総称表現を使った文は日本語訳こそ同じになるが、その背後の考え方に違いがある。英文を読んだり書いたりする時は、こうした表現のニュアンスに注意してみよう。精度の高い読解(英作文)ができるようになるに違いない。
2. 総称表現の使い方
可算名詞 | 不可算名詞 | |
---|---|---|
不定冠詞 a/an | ◯ | × |
無冠詞 | ◯ | ◯ |
定冠詞 the | ◯ | × |
総称表現は可算名詞と不可算名詞のどちらの場合でも使われる。
可算名詞の総称表現は、不定冠詞a/an、無冠詞、定冠詞theの3とおりがある。不可算名詞の総称表現は、無冠詞のみでつくれる。
以下、それぞれの詳しい使い方を見ていこう。
2-1. 不定冠詞+単数形
<不定冠詞a/an+単数形>による総称表現は、「不特定の1つがある種類の全体を代表する」といった感覚で用いられる。
はじめに注意すべき点は、不定冠詞a/anが使われたからいって、すべての文が総称表現になるとは限らないことである。次の2つの例を比べてみよう。
- (4) A monkey climbs trees. (猿は木に登る)
- (5) A monkey is on top of the tree. (猿は木の上にいる)
(4)は総称表現を使った文である。猿が木に登ることは、もちろん例外的にそうでない猿もいるかもしれないが、ほとんどあらゆる種類の猿に当てはまる性質である。
(5)は総称表現を使った文ではない。常識的に考えて、猿は常に木の上にいるような性質を持っていない。この文が示すのは、今ある1匹の猿が木の上にいる状況である。
不定冠詞a/anのあらわす「1つの」の意味が、文の容認可能性に影響を与える場合もある。「アオウミガメは絶滅の危機に瀕している」を英文にする場合、不定冠詞を使った文が誤りになるのはなぜだろうか?
- (6) Green turtles are in danger of becoming extinct. (正)
- (7) The green turtle is in danger of becoming extinct. (正)
- (8) A green turtle is in danger of becoming extinct. (誤)
(6)は<無冠詞+複数形>を使った総称表現である。無冠詞の場合、様々な種類のアオウミガメすべてを対象としている感覚である。ある動物が絶滅するのは、その種類がすべて死滅することなので、この表現が一番ピタリとくる。
(7)は<定冠詞+単数形>の総称表現である。様々な種類のアオウミガメの中から、典型的なものを1つ思い浮かべで、それについて述べている感覚である。絶滅とは種が滅びることなので、この表現も十分容認される。
(8)は<不定冠詞+単数形>の総称表現である。「任意の1つを取り出す」と「すべてが死に絶える」は相性が悪い。この文が容認されないのは、こうした意味的な矛盾による。
最後に、不定冠詞を使った総称表現は、ある語の定義を表すのに用いられることがある。次の文は「マイク(microphone)」の定義について書かれたものである。
- (9) A microphone is a device that is used to make sounds louder or to record them. (マイクは音を大きくしたり、録音したりするのに使われる装置です)
(Collins Cobuild Advanced Learner’s Dictionary)
不定冠詞の持つ任意の1つを取り出すイメージが、物事の定義とぴたり相性が良い。
2-2. 無冠詞+複数形
<無冠詞+複数形>による総称表現は、「すべての対象物を指すことで、その類全体を述べる」といった感覚で用いられる。
無冠詞による総称表現も、総称的な意味を持つ場合と、そうでない場合がある。次の2つの例文を比較してみよう。
- (10) Computers have changed the way people are living. (コンピュータは人々の生活を変えた)
- (11) Computers are available on each campus. (コンピュータはそれぞれのキャンパスで使えます)
(10)は無冠詞の複数形を用いた総称表現である。コンピュータ一般が私たちの生活様式を変えてきたと述べている。
(11)は総称表現を用いた文ではない。ここで言うコンピュータとは、大学のキャンパスに設置された特定のものを指す。
ところで、無冠詞の総称表現が他の2つと異なるのは、それが(総称的な意味で)目的語の位置にも使える点である。次の3つの例文を比較してみよう。
- (12) I love dogs. (私は犬が大好きです)
- (13) I love a dog. (私はある一匹の犬が大好きです)
- (14) I love the dog. (私はその犬が大好きです)
(12)は「犬というもの」の意味の総称表現である。一方、(13)は「ある一匹の犬」、(14)は「特定の犬」の解釈となる。
不可算名詞の総称表現でも、無冠詞が用いられる。
- (15) Necessity is the mother of invention. (必要は発明の母)
- (16) We cannot buy happiness with money. (我々はお金で幸福を買うことはできない)
(16: 英文法総覧)
(15)は主語、(16)は動詞の目的語と前置詞の目的語に、不可算名詞の総称表現が使われている例である。
不可算名詞はもともと、不定冠詞a/anがつかない。定冠詞theをつけると「その」で特定的な意味になる。よって、不可算名詞の総称表現は無冠詞なのである。
注: (13)のI love a dog.(私はある一匹の犬が大好きです)は比較のために例示したが、文としては不自然。
2-3. 定冠詞+単数形
<定冠詞+単数形>による総称表現は、「典型的な例が全体に当てはまる」といった感覚で用いられる。
総称表現に定冠詞を使う場合、特定的な解釈との違いに気をつけなければならない。例を見てみよう。
- (17) The tiger is an endangered species. (虎は絶滅危惧種です)
- (18) The tiger suddenly jumped up. (その虎は突然飛び上がりました)
(17)は総称表現を使った文である。絶滅危惧種なのは虎という類であって、(いま目の前にいる)特定の虎ではない。
(18)は総称表現を使った文ではない。飛び上がったのは、話し手と聞き手が共に了解している「その虎」である。
ところで、定冠詞を使った総称表現は、使われる名詞にいくつかのパターンがある。以下の例文はすべて、定冠詞を使った総称表現である。
- (19) The rose is a symbol of love. (バラは愛の象徴です)
- (20) The heart pumps blood throughout the body. (心臓は体中に血液を送る)
- (21) The computer is a highly useful tool. (コンピュータは非常に便利なツールです)
(19)は動植物をあらわす名詞、(20)は全体の中の一部分をあらわす名詞、(21)は発明品をあらわす名詞である。これらは定冠詞theの持つ「複数の類から典型的な例を抽象化する」という性質と合っている。
3. まとめ
この記事では、英語の総称表現について詳細を解説してきた。
内容をまとめると次のようになる:
- 総称表現は種類全体をあらわす用法
- 総称表現には3つの方法がある
- 不定冠詞+単数形: 不特定の1つがある種類の全体を代表する
- 無冠詞+複数形: すべての対象物から類全体を述べる
- 定冠詞+単数形: 典型的な例が全体に当てはまる
トイグルでは他にも、英文法に関する記事を執筆している。興味のある方はぜひご覧いただきたい。
Good luck!
詳しく説明してあり、助かります。こんなに深い内容は他に見受けられません。もしご教示いただけければ。
不可算名詞の総称表現は無冠詞ですが、無冠詞による名詞の境界線を外す機能とは関係はあるでしょうか?
機能面からはどのような働きにより、不可算名詞の無冠詞が総称表現に繋がるのでしょうか。教えていただけるとありがたいです。ドツボにハマるのであまり、この面から考えない方が良いでしょうか。
コメントありがとうございます。
お役に立てたこと、大変うれしく思います。
さて、不可算名詞は不可算という用法ゆえ、少なくとも不定冠詞a/anはつきません。
もし定冠詞theをつけると、その場合は「その」の意味で特定される読みが与えられる場合が多いでしょう。
それではどのような場合に不可算名詞が総称的に扱われるかということですが、これはX is…のように、主に主語の位置に来る場合が多いように見えます。
例: Knowledge is power. (知識は力なり)
上の例文ではKnowledgeという不可算名詞が使われていますが、特定の文脈が示されておらず、X is…といった定義をあらわす文から、総称的な用法と考えられます。
無冠詞による名詞の境界線を外す機能は不可算名詞の特徴として1つありますが、総称表現かどうかは、文脈に依存するものと考えます。
ご参考まで。
度々ご教授頂き、本当にありがとうございます。
質問1
可算名詞の複数形無冠詞や不可算名詞の無冠詞に関しては、総称用法か否かというのは文脈判断するしかないのでしょうか?
(some が付いている場合には、総称ではないとわかりますが、)
質問2
目的語の位置で総称を表せるのは、無冠詞複数形(不可算名詞なら無冠詞)だけということは理解しました。では、補語の位置で総称を表すことは、どの用法でも出来るのでしょうか?
不定冠詞の総称用法については補語で使われている例が記事内にあったので気になりました。
>無冠詞の総称表現が他の2つと異なるのは、それが(総称的な意味で)目的語の位置にも使える点である。
これに関しては、動詞の目的語という理解で大丈夫でしょうか? 前置詞の目的語も含むのでしょうか?
先の質問と合わせて宜しくお願い致します。
>蘭様
こんばんは、ご質問にお答えします。
*質問1
複数形や不可算名詞の場合ですが、たしかに文脈が一番の決め手になるものの、時制もヒントになります。
総称表現は種族全体をあらわす用法なので、基本的にはどの時間においても成り立ちます。そこから、総称表現では単純現在形が使われることが圧倒的に多くなります。
(本文中の(10)の例のように現在完了形のこともありえますが、基本的には単純現在形と考えて差し支えありません)
*質問2
私の理解では、補語の位置に来る名詞が総称表現になるという認識は持っておりません。
(先ほど記事の一部分を修正しましたが)記事内の(9)の例文に関しても、総称表現で使われているのは主語のA microphoneとなります。
*質問3
目的語に関してですが、こちらは動詞の目的語のみとなります。
(前置詞の目的語は含みません。)
昨日に質問を投稿したのにも関わらず非常に早くご回答を頂き、本当にありがとうございます。
“総称用法は主語か動詞の目的語の位置で用いられ、総称かどうかは文脈や時制(現在形か否か)で区別する必要がある”と言う内容を理解いたしました。
※この理解で正しかったでしょうか?
改めてありがとうございました。
>蘭様
はい、概ねご認識のとおりです!
尚、厳密に言うと、The dinosaur ate kelp.(恐竜は昆布を食べていた)のように過去時制でも総称な読みになることもあるので、必ずしも現在時制だけとは限りません。
ただ、総称表現のほとんどが現在時制ですので、ひとまずは現在時制で使われるというご認識でよいと思います。
もう一つの記事の質問も合わせて、ご回答頂きありがとうございました。
いつも本当に助かっております。
今後とも宜しくお願いいたします。
質問1. Restroom for women の women は総称用法と考えて良いのでしょうか?
質問2. 前置詞の目的語に総称用法が来ることはありますか?
>金田様
ご質問1に関して、Restroom for womenのwomenは総称用法には該当しないと考えます。
総称用法というのは、「ライオンとは…するものだ」とか「車とは…である」のように、恒常的属性や種類について述べる文です。
Restroom for womenのwomenは単に「(不特定多数の)女性」と言っているだけなので、女性の恒常的性質ではないように思えます。
ご質問2ですが、私の手元の資料では、総称用法はほとんどの場合は主語の位置か、たまに動詞の目的語に用いられるという程度です。
一応、『新英文法選書6 名詞句の限定表現』によれば、以下のような場合において、前置詞の目的語が総称用法で使われることがあるようです。
Dams are built by the beaver / beavers.
ありがとうございます。
確かに、前置詞の目的語に使われていると提示してくださった英文も、恒常的性質(ビーバーのダムを作るという性質)を表しているように思います。
目的語の位置の総称用法 I love dogs. も、犬の恒常的属性(私によって好かれているという状態)を表わすと考えるとしっくり来ました。
質問1:このような感じの捉え方で正しいでしょうか?
質問2:この英文の Dams も総称用法なのでしょうか? 不特定のダムというよりは、”ダムというもの”は、ビーバーによって作られるという意味かと思うのですが
宜しくお願いします。
>金田様
ご質問1ですが、ご理解のとおりです。
ご質問2ですが、たしかに主語のDamsも総称用法に見える一方、ダムはビーバー以外によって作られることも大いにあるので、なんとも言えない感じがします。
(引用元の文献には、damsのことについては記載はありませんでした。)
初めて質問します。まだ学生で勉強中だす。宜しくお願いします。
「無冠詞の総称表現が他の2つと異なるのは、それが(総称的な意味で)目的語の位置にも使える点である。」についてです。
ここで言う無冠詞の総称表現というのは、可算名詞の〈無冠詞+複数形〉と不可算名詞の〈無冠詞+単数形〉という理解で正しいでしょうか?
>和也様
はい、目的語の位置に使える無冠詞の総称表現ですが、これはご指摘のように
・「(可算名詞の)〈無冠詞+複数形〉」
・「(不可算名詞の)〈無冠詞+単数形〉」
の両方を含みます。
例:
I like dogs better than cats. (可算名詞の無冠詞複数形/英文法解説 p2)
We cannot buy happiness with money. (不可算名詞/英文法総覧 p75)
尚、We cannot buy…の例文のように、動詞の目的語と前置詞の目的語のいずれも可能です。
(不可算名詞の総称表現が目的語に使われる例は、本文に追記しておきました。)
ありがとうございます。
無冠詞の総称用法のみが目的語の位置で総称として働くということについて、考えてみたところ、play the 楽器は総称ではないのか?と思いました。
ロイヤル英文法などでは、play the 楽器が総称用法であると記載していました。
質問1: play the 楽器の総称用法は例外と考えれば良いのでしょうか?
質問2:the の総称用法は「典型的な例が全体に当てはまる」ということですが、play the 楽器でもそれは成り立っているのでしょうか?
can play the piano なら、ピアノを弾くことができるということで、ピアノ全体に当てはまるので、成り立っていると思います。
ただ、is playing the piano だと、今演奏しているというのは、ピアノ全体には当てはまっていないので、成り立っていないのではないかと思ってしまったのですが、、
>和也様
鋭いご質問ですね。色々調べてみました。
たしかに、ロイヤル英文法ではp151でを総称表現(本書では「総称単数」と記載)とした上で、p152のQ&Aにて、「(the pianoに関して)これは総称単数の用法とも特定の楽器をさす用法とも考えられる。」と述べられています。
この点に関して樋口晶幸著の『現代英語冠詞事典』では、「定冠詞にも…次のような文脈において総称的な『解釈』が可能なのである」(p292)とした上で、play等に楽器名がつくとき、それを総称的な表現としています。(p296)
また、安藤貞雄著の『現代英文法講義』でも、「種全体を表す場合」として、一般的な総称表現の例を挙げつつ、楽器名にtheがつく例を挙げています。(p456)
以下は私の私見ですが、the+楽器名も総称表現ではあるものの、用語の定義とてして「広い意味での総称表現」には該当するものの、私の記事で書いているような「狭い意味での総称表現」ではないものと考えられます。
つまり、the+楽器名のような語句なら、慣習あるいは歴史的な理由から、総称的な意味と解釈されます。なので、目的語の位置だったとしても(広い意味での)総称表現と言えます。
しかし、これがthe appleのような語句なら、総称表現ではなく、普通名詞を特定するtheという読みになるということになります。私の記事で述べられているのは、the appleのような狭い意味での総称表現に該当する話でした。
したがって、
質問1: 例外と言えば例外ですが、これは「(狭い意味での)総称表現は目的語に使えない」ということであり、広い意味での総称表現なら可能ということになりますね。
質問2: 『現代英語冠詞事典』では「演奏者は自分が所有している楽器に限らず、同種の楽器ならどれでも演奏する能力があるはずだからである」(p296)と述べています。なので、ご指摘の見解に近いですね。
ただ、おっしゃるように進行形なら「(その特定の)ピアノ」の意味になるので、その場合はthe+楽器名は総称表現ではなくなります。
以上、ご参考まで…
とても詳しく調べて頂いたようで、本当にありがとうございます。
is playing the piano は、確かに改めて考えてみれば、総称ではないですね..
共通認識のある特定のピアノを弾いているということですからね..
総称表現も細かく、詳しく見てみるとなかなか奥が深くて難しいものだと感じました。
ご丁寧な解答に感謝です。ありがとうございました
Please offer your seat to passengers with medical conditions.
電車の優先席に書いてありますが、”passengers” と複数なのは無冠詞複数の総称用法だからでしょうか?
”your seat” は単数ですから、席はある一人の乗客に対して譲ることになるはずなので、passengers with medical conditions は総称用法で「医学的事情がある乗客(というもの全般)」を表しているということでしょうか。
>蘭様
この例のpassengers(およびpassengers with medical conditions)は、総称用法というより、通常の複数形ではないかと思います。
総称用法とは「複数の個体によって構成されるある種について、その恒常的属性や種類について述べる文」です。
典型的には「ライオンとは…な動物である」のように、その複数の個体の共通の属性を述べる際に使われます。
これまで議論してきたように、複数形の名詞は目的語の位置にもあらわれます。
ただ、それもI like dogs better than cats.(私は猫というものより犬というものが好きだ)のように、「犬一般」を総称的にあらわす場合に限られます。
passengers(およびpassengers with medical conditions)は、単に「複数の乗客」ということですので、総称用法ではないでしょう。
(「乗客というものは…である」とか、「私は乗客という人が好きである」のような話でない限り、総称表現ではありません。)
尚、目的語の位置の総称用法については、『ロイヤル英文法』にて以下のように記載があります。
—————————————-
漠然と「〜が好きだ/嫌いだ」というような動詞の目的語になる場合は、無冠詞複数形を用いる(p85)
—————————————-
また、同書では、目的語の位置に総称表現を取れる動詞に、以下のものをあげています。
be afraid of, despise, detest, dislike, fear, hate, love, prefer, respectなど
Please offer your seat to passengers with medical conditions.
ありがとうございます。
your seat (あなたの椅子)を譲って、代わりに複数人の乗客に座ってもらうということでしょうか?
your seat と単数のイスを譲るので、一人の乗客に譲るのではないか、と思ってしまったのです。
your seat に代わりに座るのは一人で、であれば、offer your seat to a passenger となるのではないかと、そう考えたのです。
>蘭様
まず、passengersは「席を必要とする乗客は複数いるであろうから、そうした人(のうち誰か)に席を譲ってください」の意味で複数形になっていると考えられます。
(ここでa passengers with medical conditionsとすると、そうした特定の乗客が1人だけいるような感じに聞こえてしまいます。)
次に、your seatと単数である以上、譲る対象となる席は1つであることがわかります。
passengersと複数なのは、複数人に対して譲るというより、譲る潜在的な対象が複数いるという意味になるでしょう。
それでは、「1つの椅子を複数人に譲る」という解釈に決してならないのは、通常、1つの椅子を複数人に譲ることができないという、文の知的意味を超えた、私たちの一般常識が作用するからと言えます。
なるほど!ありがとうございます。
文の単数複数というのが、そのような違いに繋がり、一般常識にも結びついて区別して使われているということは、初めて理解しました。
文法上だけでは理解できないことは沢山あるということですね。
総称用法と総活用法(総和用法)の違いを教えてください。
(総称用法)
1. The dog is a faithful animal.
ほかの種族との対照を意識してその種族全体をひとまとめにして表す用法
(総和/総括用法)
2. The Japanese are diligent workers.
〈定冠詞+複数名詞または集合名詞〉の形で、その名詞が示すもの全体をまとめて総括する用法
これは「ロイヤル英文法」の記載です。
どちらも、その名詞が指すもの全体をまとめて指していると思いますが、どのような違いがあるのでしょうか?
総称用法は the+単数で一つの個体を抜き出して、その種全体に言及していますが、総和用法の方は the+複数形で全ての個体をそれぞれ指して全体に言及しているように思います。
なので、個人的には以下のように理解していますが、どうでしょうか?
総称用法は飽くまでも”一般的には”というニュアンスが強い(例外も勿論あるということ)。逆に総和用法は、一つ一つを足していった総和であるため、”例外はなく””全てのものが該当する”というニュアンスが強い。
総称と all を伴う総称の違いについて
All children should learn to play on some instrument.
「すべての子供は、何かの楽器がひけるようになるべきだ」(一般的)
一般的な意味で、「すべての…」を指し示していて、総称複数に all が伴った形であると、「ロイヤル英文法」で述べられています。
Children should learn to play on some instrument.
allを伴わないこの形も、総称用法ということで、子供全体について言及していると思います。
この総称用法における all の有無は単純に all “全ての”という意味を付け加えて、子供全体(すべての子供)について言及している、当てはまる というニュアンスを強めているのでしょうか?
all無しの総称→(一般的に)子供は
all有りの総称→(一般的に)すべての子供は
後者の方が”例外が少ない”感じはします。
※ 総括(総和)用法の the複数形に関しては、ジーニアスには all を伴っても同意とありました。
the[複数の普通名詞・集合名詞の前で] すべての《allを伴っても同意》
宜しくお願い致します
>蘭様
2の総和用法(総括用法)ですが、これはもともと、「the+形容詞」が「…の人々」の意味で、総称的に用いられる用法を指すのではないかと思います。
これにはthe poor(貧しい人々)のような場合もありますが、ロイヤル英文法のthe Japaneseのように、「the+国民・民族を表す形容詞(名詞)」が使われることがあります。
ロイヤル英文法では、後者を「総和用法(総括用法)」と呼んでいるように見えます。
原理については、ご指摘の話には一定の納得感はありますが、これについて言及した書籍は、私の知る限り、ありませんでした。
もともと、「the+単数名詞」の総称用法と、「the+形容詞(あるいはそれから派生した複数名詞)」は文法的に異なる根拠を持つので、比較は難しと思います。
(The lion is…とLions are…の総称用法の違いであれば、ご指摘のような捉え方の違いだと思います。)
尚、「総和用法(総括用法)」という用語は、私の知る限り、他の文法書では見かけませんでした。ロイヤル英文法の独特の用語のように見えます。
>蘭様
そうですね、allとわざわざつける以上、話してが「すべての」を意識していることは明白だと思います。
今回はshouldという助動詞があるので、「子供全体(すべての子供)に当てはまるべき」と話し手が考えているということでしょうか。
当然、例外は少ない(話し手が例外があってほしくないと考えている)ということでしょう。
『ネイティブの発想で学ぶ英語の決定詞』にも、「all+無冠詞複数名詞」を「全部の〜, 全員の〜」とした上で、以下の例文を掲載しています。
All students should learn a foreign language. (p.17)
ありがとうございます。
英文法書に書いてない用法もいくらでもあるということですね、、
わかりやすい英語冠詞講義 石田 秀雄著には載っていました。
以下は引用です。
「the+名詞の複数形」という形式は、上の図のように、加算名詞の形で言語化される対照を逐次加算していくことによって、ある完結した1つのまとまりを有する集合体を作り上げ、その成員を細大漏らさず全体的に指示することを意図したものです。そこには「1つの例外もなく」、「一枚岩の状態で」といったニュアンスが強く込められています。
>蘭様
出典、ありがとうございます。
本書は当方も保有しているので、後ほど確認しておきます。