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英語の had better は「…すべきだ」の意味で使われるイディオムである。
had better は学校英語でも教わるためか、なんとなく印象に残っているという方は多い。
一方、日本語訳と英語のニュアンスが異なる語なので、日本語話者が何気なく使うと、意図せぬトラブルを引き起こしてしまうこともある。
英語を学習しているあなたは、次のような疑問を持っていないだろうか?
- had better の使い方がわからない…
- had better は「上から目線」のニュアンスもあると聞いたが、本当なのか…?
- 海外ドラマで had better が出てきたけれど、どのようなニュアンスで言ったのか…?
had better の使い方は、市販の参考書にはあまり詳しく書かれていない。疑問が解決せず、悩んでいる方は多いだろう。
そこでトイグルでは、had better の使い方について、詳細を解説していきたい。
本記事では、had better の基本的な意味について説明した後、否定文や疑問文などの作り方、さらには短縮形など、発展的な知識を紹介する。
本記事を読めば、had better に関するほぼすべての知識が、網羅的に理解できる。そして、一歩上の英語力が身につくに違いない。ぜひ、最後までお読みいただきたい。
1. had better の中核的な意味は「緊迫感」
私たちが日本語で「…したほうがいい」と言うと、助言(アドバイス)としての意味が込められていることが多い。
例えば、ビジネスシーンにおいて、取引先に対して「当社のアプリを使ったほうがいいですよ」と言ったとしよう。
この場合、単に使用をすすめているだけでなく、「アプリを使えば色々な問題が解決しますからね」といったような、相手に対する気遣いすら感じられる。
一方、英語の had better は、日本語訳のニュアンスとは少々異なり、「命令」、あるいは場合によって「脅迫」に近いニュアンスすら感じられる。
仮に、「当社のアプリを使ったほうがいいですよ」を had better を使って直訳すると、次のようになる。
- (1) You had better use our mobile app.
(当社のモバイルアプリを使った方がいい(さもないと…))
日本語の意図する内容とは異なり、「うちのアプリを使わないと、とんでもないことになるぞ」といった感じで、ほとんど脅迫に近いニュアンスが出てしまう。このような会社と契約を結びたいとは、誰も思わないだろう。
なぜこのような解釈になるかと言えば、それは had better の中核的な意味に「緊迫感」があることに由来する。
「直ちにそれをしなければならない」という緊迫した場面において、You(あなた)を主語にすれば、「すぐにそれをしろ、そうでなければ…」になる。
ここから、had betterは「強い助言」、場合によって「脅迫」の意味で使われるのである。
それでは、先の内容を英語でどのように伝えればいいだろうか? 1つの方法は、had better を使わず、別の表現を用いることである。
書き方はいくつかあるが、シンプルに言えば、次のようになる。
- (2) We recommend using our mobile app.
(弊社のモバイルアプリの使用をおすすめします)
他にも、やや直訳調にはなるが should(…したほうがよい)などの使用も検討できるだろう。いずれにしても、had better は緊迫した感じになるため、必要な状況を除けば、あまり積極的に使うものではないと言える。
尚、筆者は社会人向けに英語学習指導をしているが、had better の日本語訳に引っ張られて、(1)のような英文を書いてしまう方を時折、見かける。
本人は誠実に交渉しているつもりだが、ネイティブ・スピーカーからすれば、脅迫的と受け取られても仕方ない。had better の正しい使い方を知ることで、こうしたコミュニケーション・エラーを防いでいきたい。
以下、had better のより具体的な使い方を見ていこう。
had better は、古い英語では ‘were better’(= it would be better)の形であったのが、後に、were の代わりに had が用いられるようになったとされる。
出典: 英語の法助動詞
2. had better の使い方
had better の使い方について、説明していきたい。
2.1.「…すべきだ」 (強い助言)
- (3) You‘d better phone to say you’ll be late.
(遅れることを電話すべきです) - (4) I think I‘d better tell you the truth.
(本当のことを言った方がいいと思うんです)
3: LODCE
4: Meaning and the English Verb (3rd)
had better は「(必ず)…すべきだ」の意味で、<強い助言> をあらわす。
(3)は、遅刻しそうな聞き手に対して、電話するよう、話し手が助言している場合である。
(4)のように、1人称(I または We)を主語にすると、話し手が自分をいましめるようなニュアンスになる。
2.2.「…したほうがいい(さもないと)」(警告・脅迫)
- (5) You’d better not do that again.
(もうそんなことはするなよ) - (6) You‘d better help me. If you don’t, there’ll be trouble.
(私を手伝ってくれ, そうでないと面倒なことになるぞ)
5: オックスフォード現代英英辞典 (第10版)
6: 現代英語語法辞典
had better は「…したほうがいい(さもないと…)」の意味で、<警告・脅迫> をあらわす。
(5)は話し手が聞き手に対して、「もうそんなことはするなよ」と<警告>している場面である。
また、(6)のように、「さもないと…」のように続けば、<脅迫> のニュアンスにになる。
2.3.「…したほうがいいよ」(気遣い)
- (7) You’d better go to the doctor about your cough.
(咳は医者に行ったほうがいいよ)
場合によって、had better は友人などに対する、<気遣い> をあらわすことがある。
(7)は、咳をしている聞き手に対し、話し手が医者に行くよう、助言している例である。
日本語母語話者にありがちな間違いは、「気遣い」のつもりで had better を使ったところ、「警告・脅迫」の意味に誤解されてしまうコミュニケーションエラーである。助言をする場合、should など別の表現を使うとよい。
3. had better を使った文の種類
had better は、肯定文のほか、否定文、疑問文、否定疑問文、受動構文など、様々な形で用いられる。
以下、had better による様々な文の種類を見ていきたい。
3.1. had better の否定文
- (8) You‘d better not wake me up when you come in.
(入って来る時, 私のことを起こさないでね)
had better の否定形をつくる場合、had better の直後に not を置く。
意味的には、ちょっとした脅し、あるいは切迫した様子を示す。
hadn’t better のように、had に not をつける形は、可能ではあるものの、ごくまれにしか使用されない。
例: I hadn’t better tell him. (彼に話すのはよくない)
Wood Flavell&Flavell によれば、”You better hadn’t do.” のような形も不可能ではないが、ほとんど方言に近い言い方とされる。
3.2. had better の疑問文
- (9) Had I better tell them?
(彼らに話さなければいけませんか?)
9: 英文法大事典 (第1巻)
had better の疑問文は、”Had X better do …?” の形となる。
ただ、使用頻度はあまり高くない。
3.3. had better の否定疑問文
- (10) Hadn’t we better phone the police?
(警察に電話したほうがいいのではないか)
10: Meaning and the English Verb (3rd)
had better は時折、否定疑問文で使われる。
この場合、通例、”Hadn’t X better do …?” の形となる。
否定疑問文の場合、not の位置に違いにより、解釈が変わることがある。
Had we better not go?(行かないほうがいいかな)は Would it be advisable if we didn’t go? と同義で、not は動詞goを否定する。
一方、Hadn’t we better go?(行った方がいいんじゃない)は I think we had better go; don’t you agree? と同義で、not は文全体を否定する。
出典: A Comprehensive Grammar of the English Language
3.4. had better の付加疑問文
- (11) You’d better go, hadn’t you?
(行ったほうがいいんじゃないか) - (12) You had better not tell him, had you?
(彼に言わない方がいいんじゃない)
11,12: 英語基本形容詞副詞辞典
had better は付加疑問文でも用いられる。
(11) のように、肯定文の付加疑問は …, hadn’t X?、(12) のように否定文の付加疑問は …, had you? になる。
3.5. had better の受動態
- (13) Breakfast had better be eaten before 9 o’clock.
(朝食は9時までに召し上がっていただきたい)
13: 現代英米語用法事典
had better の後、受動不定詞を続けることもできる。
4. had better に関する発展的な知識
had better に関する、発展的な知識を説明していきたい。
4.1. had better の短縮形
- (14) You‘d better come back to London with me.
(僕と一緒にロンドンに戻ってくれ) - (15) You better be going now.
(もう行った方が良いよ) - (16) Better not spend money there.
(そこでお金を使わない方がいい)
15: Garner’s Modern English Usage (5th)
had better は (14)のように、”X’d better do … ” の形で使われることが多い。
くだけた会話では、(15)のように、had が省略されることがある。
また、主語が You の場合、(16)のように、”You had” が省略されることがある。
会話では [(ə)d béta] のように、had をほとんど聞き取れないくらい、省略して発音する。
4.2. 動詞の省略
- (17) ‘I’ll give you back the money tomorrow.’ ‘You’d better!’
(「明日、お金を返すよ」「そうしなさい」) - (18) ‘Do you want to go get a drink?’ ‘l‘d better not.’
(「何か飲み物を取りに行かないかい」「やめておくよ」)
会話やくだけた書き言葉にて、文脈から意味が明らかな場合、had better 以下の動詞(原形不定詞)が省略されることがある。
(17)は肯定文、(18)は否定文の例である。
オックスフォード現代英英辞典では、(17)のような “You’d better.” を “as a threat”(脅しとして)と表記している。
4.3. had better のあらわす時制
- (19) You’d better tell her now at once.
(彼女には今すぐ伝えたほうがいい) - (20) You’d better tell her now tomorrow.
(彼女には明日伝えたほうがいい)
19, 20: 現代英文法総論
had better は、語形は過去形だが、過去時に言及することはできない。
(19)は現在、(20)は未来について述べている例である。これらの文にて、”… yesterday.” と過去をあらわそうとすると、文法的に不可となる。
had better が未来について述べる場合、通例、比較的近い将来に起こることに言及する。
4.4. had better の完了形・進行形
- (21) You‘d better have changed your mind when I call tomorrow.
(明日電話する時には, その考えを変えているほうがいいぞ) - (22) You‘d better be working harder than this when the boss comes back.
(上司が帰って来る頃にはもっと熱心に仕事をしていろよ)
21: Meaning and the English Verb (1st)
22: Meaning and the English Verb (3rd)
had better は完了形、または進行形でも用いられる。
(21)は had better が完了形で使われている例である。「…してしまったほうがいい」と、相手に忠告・警告をしている。
(22)は had better が進行形で使われている例である。この場合も、相手に忠告・警告をするニュアンスがある。
「had better+完了形」は、(21)のように「…してしまったほうがいい」と完了の意味を表す場合と、「…したでしょうね」や「…しただろうな」と相手の過去の行為を確認する場合とがある(参考:『コーパス英文法』)
会話では “I’d better be going.(失礼します)” のようなフレーズで使用されることがある。
4.5. 無生物主語で用いられる場合
- (23) There had better be a good explanation.
(ちゃんとした説明があるほうがいい) - (24) It had better rain, or we’ll lose the crop.
(雨が降ってほしい, そうでないと収穫がなくなってしまう)
had better は無生物が主語の場合にも用いられる。
この場合、多くは「…であってほしい」といった、<祈願> の意味が含まれる。
(23)は there、(24)は it が主語の例である。
This had better be the last time you come to class without your work.(宿題もしないで授業に出てくるのはこれで最後にしたほうがいいな)のように、had better の無生物主語構文が <警告・脅迫> の意味を持つこともある。
出典:『英語助動詞の語法』
参考: had better の語形
had better は “had” と “better” の2語で、1つのまとまった意味をあらわす。
1人称、2人称、3人称のいずれにも使用できる。以下の例を比較してみよう。
- (25a) I had better leave now.
- (25b) You had better leave now.
- (25c) He had better leave now.
注目すべきは、(25c)のように三人称単数の主語であっても、三単現のsをつける必要がないという点である。((☓) He hads better… や (☓) He had better leaves … は不可。)
また、”had” という語からも明らかなように、形は過去形である。一方、「〜すべきだ/〜したほうがよい」のように、意味は現在、または近接未来を示す。語形的に対応する現在形はない。
語形について人称別にまとめると、以下のようになる。
I / We | had better |
You / You | had better |
He / She / It / They | had better |
had better は “It would be good to …” の意味であり、”It would be better to …” ではない。すなわち、この構文における better には、比較の意味はない。
このように、had better は助動詞的な性質を持つものの、will や can などの法助動詞とは明らかに異なる。had better は be able to や have to といった疑似法助動詞(quasi-modals)、あるいは準助動詞と言って良いだろう。
まとめ: had betterを使いこなす
この記事では、英語の had better について詳細を解説してきた。
内容をまとめると次のようになる:
- had better の中核的な意味は「緊迫感」
- 助言, 警告, 脅迫, 気遣いなどの意味がある
- 否定文, 否定疑問文, 付加疑問文を作れる
- くだけた会話では短縮形で使われることが多い
- 主語が無生物でも使用できる
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