暗記不要!イラストでわかる英語の冠詞の使い方

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aやtheなどの単語のことを、英語では冠詞と呼ぶ。冠詞は日本語に存在しないため、日本人にとって最も難しい英文法ではないだろうか。

そこでトイグルでは、日本人のために冠詞の使い方を徹底解説していきたい。

暗記に頼らず感覚で理解できるよう、ネイティブスピーカーが持っているイメージを中心に、冠詞の謎に迫っていきたい。

*目次

  1. 冠詞とはなにか
  2. 不定冠詞a/anの使い方
  3. 無冠詞の使い方
  4. 定冠詞theの使い方
  5. 上級編: 無冠詞とゼロ冠詞
  6. まとめ

1. 冠詞とは何か

はじめに、英語の冠詞の全体像を説明しよう。

1-1. 冠詞の定義

ロングマン現代英英辞典によれば、冠詞(article)は次のように定義されている。

a word used before a noun to show whether the noun refers to a particular example of something or to a general example of something.

(意訳: その名詞が、特定あるいは一般的な例のどちらであるかを示すため、その語の前に使われる単語。)

簡単に言えば、冠詞は名詞の性質や属性を示す役割を持つ単語だ。

日本語は比較的名詞に「ゆるい」言語のため、冠詞と呼ばれる文法は存在しない。

1つ・2つと数えられる「本」、数で測れないため量で表す「水」、目で見ることができない「愛」、都市名である「東京」など、種類が異なる名詞に文法的な区別をせず、そのままの名称で使うことができる。

対照的に、英語は名詞に「厳格」な言語だ。

その名詞が数えられるのか否か。また、会話・文章内ではじめて登場したのか否かで、異なる文法を用いる必要がある。

冠詞の持つ様々な機能によって、これら名詞の分類や特定を明確にできるのだ。

1-2. 英語の冠詞は3種類

次に、英語の冠詞の種類を紹介していこう。英語の冠詞は大きく分けて、次の3種類がある。

  1. 不定冠詞a/an
  2. 無冠詞
  3. 定冠詞the

無冠詞とは、他のいずれの冠詞をつけないことを指す。トイグルでは「冠詞をつけないことにも意味がある」と考えるため、これを「無冠詞をつける」と表現したい。

冠詞の性質と対象は、次の図でまとめている。今はまだ理解できなくても構わない。トイグルを読んでゆっくり学習していこう。

冠詞一覧

2. 不定冠詞a/anの使い方

ここから、英語の冠詞を1種類ずつ説明していく。まずは不定冠詞a/anから取り上げたい。

a/anには様々な用法があるものの、そのすべては次の2つの基本イメージが根幹となっている。これまで例外と言われた用法も、すべてこれらの基本イメージから派生したものにすぎない。

機能1: 名詞に境界線を与える

不定冠詞a/anには、その名詞に境界線を与える機能を持っている。境界線が与えられた名詞は「1つ、2つ」と数えることができるため、不定冠詞a/anは可算名詞と共に使われるのだ。

不定冠詞aのイメージ

例えば、book(本)はもともと明確な境界線がある物体である。そこで不定冠詞aと相性が良く、共に使われることが多い。

  • a book (本)

冠詞

しかし、water(水)は境界線の存在しない液体である。従ってaとの併用には矛盾が生じるため、不定冠詞a/anが使われないのだ。

  • water (水)

冠詞

機能2: 不特定のひとつを取り出す

不定冠詞a/anはもう一つ、「不特定のひとつを取り出す」機能を持っている。文字通り、たくさんあるものから適当なひとつを取り出すイメージだ。

不定冠詞aのイメージ

ここで言う「不特定」の範囲は、会話・文章の状況によって異なる。次の例文では、その市場でたくさん売っているオレンジの中の1つという意味になるだろう。

  • I bought an orange in the market. (私はその市場でオレンジを買った。)

冠詞

もし会話・文章から範囲が特定できない場合、究極には「全宇宙」となる。

冠詞

どちらにせよ、不定冠詞a/anの「不特定のひとつを取り出す」機能が働いていることに変わりない。

*不定冠詞a/anの用法一覧

これまで説明したように、不定冠詞a/anには2つの核となる機能がある。

  • 機能1: 名詞に境界線を与える
  • 機能2: 不特定のひとつを取り出す

それではここから、代表的なa/anの用法を紹介していく。これらはすべて、a/anの持つ2つの機能を使うことで、自然に解釈することが可能だ。

1. aは子音の前に、anは母音の前に用いる

これまで「不定冠詞a/an」と書いてきたが、その意味はaとanで完全に共通している。

唯一の違いは、aは子音から始まる名詞の前に、anは母音から始まる名詞の前に用いる点のみだ。単に発音のしやすさのために分かれているにすぎない。

  • a book (本)
  • an apple (リンゴ)

2. 可算名詞の単数形と共に用いるa/an

不定冠詞a/anは、可算名詞の単数形と共に用いる。これは先に確認した「機能1. 名詞に境界線を与える」がそのまま使われている用法だ。

例として、roomという単語を使って考えてみよう。roomにはもともと、「空間」というコアのイメージがある。

冠詞

このroomにaをつけるとどうなるだろうか。aには「区切りを与える」機能があるため、a roomで区切りのある空間、つまり「部屋」を意味することになるのだ。

冠詞

3. はじめて話題に上がる名詞に用いるa/an

不定冠詞a/anの機能の2つ目は、「不特定のひとつを取り出す」だった。これは、「聞き手が特定できないモノ」に使うと言い換えることができる。

例えばa book(本)と言えば、聞き手はそれが具体的にどの本のことを指しているのかわからない。そこで、世の中にたくさんあるうちの、適当な「本」という物体を想像することになる。

冠詞

4.「1つの」を表すa/an

aは不特定の中から1つを取り出す。そこで、a/anが使われる名詞の数は「1」であり、「1つの」を暗に意味することとなる。

  • He brought a book. (彼は1冊の本を持ってきた。)

実際に「1つの」を強調する場合、より意味を明確にするためoneが使われることが多い。

  • He brought one book. (彼は1冊の本を持ってきた。)

5. 総称用法としてのa/an

ある名詞の一般論を述べることを、総称用法と呼ぶ。

例えば、「子供には愛が必要だ」をいう場合、次のように表現できる。

  • A child needs love. (子供には愛が必要だ。)

世の中にたくさんの子供がいるが、そのどの子供をとっても「愛が必要」と言えることは、子供に関する一般論を述べていることを意味するのだ。

不特定から1つのモノを取り出すa/anのイメージとぴったりである。

6. 固有名詞と共に用いるa/an

通常、固有名詞には無冠詞を用いることが多い(=冠詞を使わない)。

  • Sony canceled the move’s release. (ソニーはその映画の公開を取りやめた。)

しかし、固有名詞にa/anをつけて使うこともできる。この場合、その固有名詞は企業などの集団であることが多く、a/anをつけることで、その企業が作る製品・サービスのひとつを示すことになる。

  • I can’t afford to buy a Sony. (ソニー製品を買う金銭的な余裕はない。)

固有名詞+a/anの用法は、図にするとわかりやすいだろう。ここでも、「機能2: 不特定のひとつを取り出す」のイメージがそのまま使われている。

冠詞

7. 物質名詞と共に用いるa/an

water(水)やcoffee(コーヒー)のような液体、goldのような鉱山物質はともに物質名詞と呼ばれる。これらは明確な境界線を持った物質ではないため、通常は不可算として使われることが多い。

  • You cannot drink tap water in this country. (この国では、あなたは水道水を飲むことはできない。)

しかし、特に飲み物などの物質名詞には、不定冠詞a/anをつけて使うことができる。a/anの持つ名詞に区切りを与える機能を使うことで、「1杯の」のような単位を与えることができるのだ。

  • Would you like a coffee? (コーヒーはいかがですか?)

もっともこれは、a cup ofを省略した形とも解釈できる。

  • Would you like a cup of coffee? (コーヒーはいかがですか?)

どちらにせよ、a/anが名詞に区切りを与えている用例と言える。

8. 抽象名詞と共に用いるa/an

anger(怒り)などの感情、beauty(美しさ)のような概念、sleep(睡眠)などの行動は抽象名詞と呼ばれる。これらはbook(本)のような明確な形がないため、通常は不可算として使われることが多い。

  • We talked for three hours about beauty. (私たちは美について3時間話した。)

しかし、これら抽象名詞に不定冠詞a/anを用いることもできる。例を見てみよう。

  • There was a silence between us. (私たちの間に、沈黙があった。)

この文の意味をよく考えると、それは概念としての沈黙ではなく、実際に起こった一定期間の沈黙であることがわかる。話し手は不定冠詞aの境界線を与える機能を使うことで、その沈黙を始まりから終わりまでの期間に区切りを与えたのだ。

冠詞

このように、a/anの持つ境界線を与える機能は物理的なモノだけでなく、抽象的な概念にも応用することができる。

以上が、不定冠詞a/anの持つ機能と、代表的な用例である。

3. 無冠詞の使い方

次に、無冠詞のイメージと使い方を見ていこう。

無冠詞の場合、次の2つの機能のどちらか片方が使われることが多い。用例と共に見ていこう。

機能1: 名詞の境界線を外す

無冠詞は、名詞の境界線を外す機能を持っている。

境界線のない名詞は意味が抽象化されるほか、何かのモノや物質の集合体となる。

無冠詞のイメージ

機能2: 名詞に同一感を与える

無冠詞には、その名詞に同一感を与える機能を持つ。その名詞に何らかの意味を特定すると言い換えてもいいだろう。

無冠詞のイメージ

*無冠詞の用法一覧

これまで説明したように、無冠詞には2つの核となる機能がある。

  • 機能1: 名詞の境界線を外す
  • 機能2: 名詞に同一感を与える

それではここから、代表的な無冠詞の用法を紹介していく。これらはすべて、無冠詞の持つ2つの機能を使うことで、自然に解釈することが可能だ。

1. 不可算名詞と共に用いる無冠詞

不可算名詞は、数えられない名詞と呼ばれ、可算名詞のように明確な姿・形のある物体ではない。water(水)がH2Oという物質の集合体であるように、不可算名詞は形のない構成要素が集まって形成されていると考える。

水は1リットルでも100リットルでも、同じ水であることに変わりない。そこで、不可算名詞には明確な境界線を描くことができないため、境界線を外す機能を持つ無冠詞と相性が良いのだ。

冠詞

具体例を見てみよう。chickenという単語に不定冠詞aをつけて可算名詞の単数形として扱うと、それは明確なリンカクを持つ1匹のニワトリを意味する。

  • There is a chicken in the yard. (庭にニワトリがいる。)

冠詞

一方、chickenに無冠詞をつけて使うと(=aをつけずに使うと)、境界線のないchicken、すなわちスーパーなどで売っている調理用の鶏肉のことを指すのだ。

  • I bought chicken yesterday. (昨日、鶏肉を買いました。)

冠詞

2. 抽象概念

無冠詞は、名詞の境界線を外す機能が備わっている。境界線のない名詞は形があいまいになり、より抽象的な意味を持つことになる。

例えば、prisonという単語を考えてみよう。これは不定冠詞aがつくと境界線(=リンカク)のあるprison、すなわち「(建物としての)刑務所」の意味となる。

  • I know what the inside of a prison is like. (私には、刑務所の中がどんな感じかわかる。)

冠詞

しかし、prisonをゼロ冠詞で用いる場合、それは「犯罪者が罪をつぐなう施設」という、より抽象化された本来の意味として使われる。

  • Prison is an inefficient way to solve social problems. (刑務所は、社会問題を解決するには非効率な方法である。)

冠詞

3. 可算名詞の複数形と共に用いる無冠詞

英語では2つ以上の可算名詞の単数形が集まれば、その数が10でも100でも複数形として扱う。

そのため、可算名詞の複数形に明確なリンカクを描くことは難しい。

可算名詞の複数形

このことから、リンカクを外す機能を持つゼロ冠詞は、可算名詞の複数形とも相性が良い。

例えば、chickenの複数形であるchickensをゼロ冠詞と共に用いれば、それはリンカクのあるa chickenがたくさんいるような状況が想像される。

冠詞

4. 固有名詞に用いる無冠詞

ほとんどの固有名詞は、無冠詞と共に使われる。

固有名詞とは、人名・地名・国名などの名称を表し、同じ種類の中から1つの事物を区別するために使う言葉である。世界に国はたくさんあるが、Japan(日本)という名称を使うことで、他の国々と日本と明確に区別している。

ここで、無冠詞は名詞に同一感を与える機能があることを思い出そう。Japanを無冠詞で使うことで、たくさんの国々の中から、東アジアにある島国とJapanを結びつけることができるのだ。

  • I am from Japan. (私は日本から来ました。)

冠詞

5. 役職に用いる無冠詞

役職やポジションを表す名詞には無冠詞を使う。無冠詞が「その人物=その役職」の同一感を表現するからと考えられる。

  • director of the program (そのプログラムのディレクター)
  • Dr. Joe (ジョー博士)

6. 親近感がある名詞に用いる無冠詞

無冠詞の持つ同一感のイメージは、時間や場所を表現する際に使うこともできる。

例えば、dinner(夕食)、summer(夏)、next week(来週)などの単語は、通常無冠詞で使われている。これは、英語に世界において話し手が心理的な同一感、言い換えれば親近感を抱いているからである。

  • Let’s talk after dinner. (夕食の後に話しましょう。)
  • I’ll see you next week. (来週会いましょう。)
  • They usually go skiing in winter. (彼らはたいてい冬にスキーに行きます。)

場所に関しても同様に、心理的な距離感が無冠詞の使用を決定する。

  • He is still at home. (彼はまだ家にいる。)

以上が、無冠詞の持つ機能と、代表的な用例である。

4. 定冠詞theの使い方

次に、定冠詞theのイメージと使い方を見ていこう。

機能1: 物事を特定する

定冠詞theの最も本質的な機能が、「物事の特定」である。特定とは、話し手と聞き手の双方が「あの◯◯」といったように、その物事を1つに定められることを言う。

定冠詞theのイメージ

機能2. 名詞の性質を説明しない

不定冠詞a/anは、その名詞が可算名詞の単数形であることを表すシグナルとなる。また、無冠詞は、その名詞が可算名詞の複数形、あるいは不可算名詞であることを表すシグナルとなる。

しかし、定冠詞theにはこのような性質の説明機能はない。従って、定冠詞theは可算・不可算を問わず、あらゆる名詞に使うことができる。

*定冠詞theの用法一覧

これまで説明したように、定冠詞theには2つの核となる機能がある。

  • 機能1: 物事を特定する
  • 機能2: 名詞の性質を説明しない

それではここから、代表的な定冠詞の用法を紹介していく。これまでと同様に、定冠詞の持つ2つの機能を使うことで、自然に解釈することが可能だ。

1. 既に話題に上がったものを指すthe

一度話題に上がったため、話し手と聞き手が共に特定できる名詞には、定冠詞theをつける。

日本語の「例の」や「あの」に近い感覚であろう。「特徴1: 物事を特定する」がそのまま使える用法だ。

  • I bought a book yesterday. The book is really interesting. (私は昨日本を買いました。その本はとても面白いです。)

2. 常識から特定できるthe

世の中の常識的に、話し手と聞き手が1つに断定できる名詞には、定冠詞theをつける。これは、世の中に複数存在し得ないモノに使うことが多い用法だ。

  • the sun (太陽)
  • the earth (地球)
  • the moon (月)

3. 状況から特定できるthe

その名詞が状況的に1つのものに特定できる場合、定冠詞theをつける。

例えば、窓がひとつしかない部屋でその窓について言う場合、話し手も聞き手もその窓のことを特定できる。従って、定冠詞theをつけるのだ。

  • Can you open the window please? (窓を開けてもらってもいいですか?)

4. 文脈から特定できるthe

その名詞が文脈的に1つのものに特定できる場合、定冠詞theをつける。

例えば、いまパソコンの話をしているとしよう。そこで「マウス」と言えば、それはそのパソコンのマウスであることが容易にわかるだろう。この場合、定冠詞theを使おう。

  • I bought a new computer last week. But the mouse got broken yesterday. (私は先週パソコンを買いました。しかし、昨日マウスが壊れました。)

5. 名詞の意味を特定するthe

名詞に前置詞ofや関係代名詞を一緒に使う場合、その名詞の意味を特定するために定冠詞theを使うことがある。

例えば、the smell of roses (バラの匂い)を使って考えてみよう。

この世には様々なsmell(匂い)が存在するが、ここではof roses (バラの)という形で「バラの匂い」であることを限定している。従って、「物事を特定する」機能を持つtheが使われるのだ。

6. モノの形から本質を抜き出すthe

名詞には、その表層的な意味を超えた本質的な機能が存在する。定冠詞theはそのような「モノの本質」を抜き出し、特定することができるのだ。

例えばguitar(ギター)を使って考えてみよう。ギターを演奏するとは、単にギターという物体を引っ掻いて音を鳴らすことではない。

上手い下手は別として、ギターは音楽を奏でる芸術表現をするための道具であり、それが名詞guitar(ギター)の持つ本質的な意味であると言える。

そのため、「演奏する」と言う際には”the”を使うことでギターの本質的な機能を指すことができるのだ。

  • I played the guitar yesterday. (私は昨日、ギターを弾きました。)

冠詞

7. 特定のもの・空間・時間にまとまりを与えるthe

定冠詞theの持つ「特定する」機能を使うことで、あるモノ・空間・時間を任意に特定し、それにまとまりを与えることができる。

例えば、特定の時間を表す名詞を使うとき、定冠詞theを使うことがある。

  • in the morning (朝)

morning(朝)という単語は、朝と呼ばれる一定の時間帯(午前6時から12時くらい)を指す。theをつけることで、1日の中の区切りのある時間帯を特定した上で、morning(朝)を指し示すことができるのだ。

冠詞

以上が、定冠詞theの持つ機能と、代表的な用例である。

5. 上級編: 無冠詞とゼロ冠詞

『3. 無冠詞の使い方』で、無冠詞には次の2つの機能があると解説した。

  • 機能1: 名詞の境界線を外す
  • 機能2: 名詞に同一感を与える

しかし英語上級者の中には、場面によってこの2つの機能がバラバラに使われることに、違和感を覚えた人もいるだろう。例えば、waterなどの不可算名詞とTokyoのような固有名詞のどちらにも無冠詞をつけれる点には、規則性がないように見える。

この問題は、無冠詞をさらにゼロ冠詞と、(狭い意味での)無冠詞の2つに分解することで、解決できる。

  • ゼロ冠詞
  • (狭い意味での)無冠詞

5-1. ゼロ冠詞と無冠詞の違い

ゼロ冠詞と(狭い意味での)無冠詞はどちらも、aやtheなどの冠詞をつけずに使う点において一致している。その役割の違いを比較してみよう。

  機能 対象
ゼロ冠詞 名詞の境界線を外す
  • 不可算名詞(例: chicken)
  • 可算名詞の複数形(例: chickens)
(狭い意味での)無冠詞 名詞に同一感を与える
  • 固有名詞(例: Tokyo)
  • 役職名(例: director of the program)

端的に言えば、ゼロ冠詞は(広い意味での)無冠詞の機能1に当たるため、境界線を外して名詞を分類する役割を持つ。不定冠詞a/anは可算名詞の単数形を分類し、ゼロ冠詞は可算名詞の複数形と不可算名詞を分類するのだ。

一方、(狭い意味での)無冠詞は機能2に当たるため、名詞に同一感を与えて特定する役割を持つ。一般的な意味でも使われる名詞を特定する場合はtheを使い、唯一無二のモノを示す固有名詞には(狭い意味の)無冠詞を使う。

これらの議論を元に、英語の冠詞を詳細に分類してみよう。

無冠詞とゼロ冠詞

このように、英語の名詞に使わる冠詞は、すべて例外を使わずはっきりと区別することができる。冠詞にまつわるモヤモヤとして疑問が解けるのではないだろうか。

5-2. ゼロ冠詞と無冠詞の意味は対称的

無冠詞をゼロ冠詞と(狭い意味での)無冠詞に分けたことで、我々は4つの冠詞を手にした。

  • 不定冠詞a/an
  • ゼロ冠詞
  • (狭い意味での)無冠詞
  • 定冠詞the

これら4つの冠詞を、名詞の意味を特定する度合いの強弱によって区分してみよう。

特定が弱い ⇔ 特定が強い

ゼロ冠詞 – some – a – the – 無冠詞

名詞の中で最も不特定なものを表す冠詞は、ゼロ冠詞である。次に「いくつかの」を表すsomeがある。不定冠詞a/anは、名詞の特定という点では実は中間レベルに位置する冠詞となる。

定冠詞theは、話し手と聞き手が特定できる合図のような冠詞だ。しかし、固有名詞のような唯一無二の物事を特定する場合、(狭い意味での)無冠詞が定冠詞theよりも適している。

この5つの冠詞・限定詞を、例文を使って比較してみよう。ここでは名詞milk(牛乳)を例として用いる。

  • I drink milk everyday. (ゼロ冠詞: 私は毎日牛乳を飲みます。)
  • Some milk contains preservatives. (Some: 牛乳の中には防腐剤入りのものがあります。)
  • Can I have a milk? (不定冠詞: グラス一杯の牛乳をいただけますか?)
  • Give me the milk. (定冠詞: 例の牛乳をください。)
  • Milk is the name of my rock ’n’ roll band. (無冠詞: ミルクは私のロックバンド名です。)

ゼロ冠詞と無冠詞の違いは、英文ライティングの際に特に役立つ知識だ。一歩上の英語力を求める方は、ぜひとも覚えておこう。

6. まとめ

当エントリーでは、英語が持つ3つの冠詞の用法を説明してきた。英語には不定冠詞a/an、無冠詞、定冠詞theの3つがあり、それぞれ次のような機能を持っている。

*不定冠詞a/anの機能

  1. 名詞に境界線を与える
  2. 不特定のひとつを取り出す

*無冠詞の機能

  1. 名詞の境界線を外す
  2. 名詞に同一感を与える

*定冠詞theの機能

  1. 物事を特定する
  2. 名詞の性質を説明しない

冠詞の学習はこのように、それぞれの持つ基本イメージを理解することが重要だ。暗記に頼っていては英語の本質を理解することができず、学習に行き詰まってしまうだろう。

トイグルが英語学習者の皆さんのお役に立てれば光栄だ。

*当記事を読んでもっと知りたいと思った方は、次のエントリーも参考にしていただきたい。

Good luck!

65 COMMENTS

知っておきたい!比較級・最上級の使い方総まとめ[英語]

[…] 尚、最上級は「一番の◯◯」を意味するため、「最上級+名詞」の際には冠詞”the”を一緒に使うことが多い。”the”にはその名詞を特定する機能があるからだ。冠詞についてさらに深く知りたい方は、『aとtheの違いがわかる!英語の冠詞を正しく選ぶ7ステップ』をご覧頂きたい。 […]

田邉竜彦

>せくしいさま

お褒めのコメント、ありがとうございます。
分かりやすいと言っていただくほど、嬉しことはございません。
これからもトイグルをよろしくお願いします。

とある主婦

ありがとうございます。コアのイメージで冠詞が理解できました。さっきまで見ていた文法書の冠詞の解説が難しかったので、助かりました。

田邉竜彦

>とある主婦さま
お褒めのコメント、ありがとうございます。
おそらく、冠詞は日本人にとって最も難しい英文法の1つです。
しかし、多くの参考書が冠詞の「分類」についてページを割いているものの、冠詞の本質的な「機能」をわかりやすく説明しているものがありません。
当エントリーがお役に立ったということで、大変嬉しく思います。
今後ともトイグルをよろしくお願いします。

riverside

すばらしい解説を堪能しました。ゼロ冠詞と(狭い意味での)無冠詞との区別はまだきちんと自分で把握しきれていないかもしれませんが、最後の milk を使っての例示が圧巻でした。また、名詞の特定度の「弱い」から「強い」までのスペクトラムの両端に(広い意味での)無冠詞があることに、何かとてもインパクトを受けました。いずれにしろ、とても勉強になりました。拝読させて頂き、ありがとうございました。

田邉竜彦

>riversideさま
お褒めのコメント、ありがとうございます。
無冠詞は重要な要素であるにもかかわらず、初心者向けの冠詞参考書に載っていることは少なく、上級者向け参考書では難解な言葉で説明されているため、日本人があまり触れてこなかった項目だったと思います。
私自身も英文ライティングで冠詞と悪戦苦闘してきたため、たくさんの文献を調べて考えた結果、当エントリーで紹介した結論に至りました。
学習の参考になれば幸いです。

riverside

ご返信ありがとうございます。
「日本人があまり触れてこなかった」。仰るとおりだと思います。無冠詞は多分、自分を含め多くの日本人にとって最もつかみにくい項目の一つではないかと思います。仰るよう沢山の文献にふれて帰納的につかんで行くよりないのではないかと感じていました。個人的に最近ようやく気づいたのは、名詞が動詞的感覚で用いられる時は、その動詞的感覚において無冠詞になるようだ、ということくらいです。Practice makes perfect. のような例ですが、唯一の発見です。不定冠詞が「境界線」を与えるはたらき、という説明はとてもすばらしいと思いました。かさねて、ありがとうございました。

ななお

冠詞は私たちにとってとても難しいです。日本人はテーブルの上のリンゴを英語にするときはその物質の性質=リンゴですが、英語圏の人は一つのリンゴを見た場合、をの個体の”数”が優先するという脳をもっているらしいです。

田邉竜彦

>ななおさま
そうなんですね。これは「言語が違えば見える世界が違う」という1つの例でしょうね。

比較級とは|英語の比較級・最上級の使い方まとめ

[…] 尚、最上級は「一番の◯◯」を意味するため、「最上級+名詞」の際には冠詞”the”を一緒に使うことが多い。”the”にはその名詞を特定する機能があるからだ。冠詞についてさらに深く知りたい方は、『aとtheの違いがわかる!英語の冠詞を正しく選ぶ7ステップ』をご覧頂きたい。 […]

図書委員長

わかりやすい。
冠詞はそもそも、日本語にはない概念なので、ずっとわかりにくく、なぜわざわざ冠詞があるのだろうと思っていましたが、これを読んでaとtheをつける目的が違うことや、ゼロ冠詞と無冠詞の指している意味の違いが明確にはっきりとわかりました。

田邉竜彦

>図書委員長様

お褒めのお言葉、ありがとうございます。
今後ともトイグルをよろしくお願いします。

ポーラ

日本人にとって捉えにくい冠詞について、私も悩む事が多々あり、大変勉強になりました。

しかしながら、この記事を読ませて頂いてもまだ、総称用法についての個人的な疑問が晴れませんでした。
総称用法では、可算名詞の複数形がとられる場合も多々あります。
そういう場合、複数形のゼロ冠詞の場合は理解しやすいのですが、
Children are our future.
上記のように、あえて一つをとってa childなどとする場合、どういったニュアンスの違いが生じるのか、どちらでもいいのか…

総称用法、冠詞で検索すると様々なヒントとなる記事はあるのですが、不定冠詞を使って総称用法とする形をとるのか、複数形のゼロ冠詞を使うのか、を決めるためのよい助言等ありましたら、是非教えて頂きたいです。

田邉竜彦

>ポーラ様

ご質問ありがとうございます。
総称表現は、その対象となる名詞の種類にもよりますが、基本的にはそれぞれの冠詞の持つイメージがそのまま使われます。

例を見てみましょう。
すべて、日本語では「ライオンは高貴な動物である」の意味ですが、ニュアンスが若干異なります。(例文は『現在英文法講義』P463より)

1. A lion is a noble beast.
2. The lion is a noble beast.
3. Lions are noble beasts.

1では不定冠詞aが使われています。世界中にはたくさんのライオンがいますが、「どのライオンを1頭選んでも同じことが言える、だから総称表現」のニュアンスです。
2では定冠詞theが使われています。theは「モノから本質を抜き出す」機能があるため、「ライオンという生物に同じことが言える、だから総称表現」のニュアンスです。
3では無冠詞が使われています。名詞は複数形なので、「すべてのライオンに同じことが言える、だから総称表現」のニュアンスです。

使用場面や意味にもよりますが、総称表現としては3の無冠詞+名詞の複数形が、一般化した事実を述べているには最も適しているかと思います。

ご参考まで。

andou1221

狭義の無冠詞について

お世話になっております。名詞に同一感を与える、という無冠詞の用法があまりにも漠然としすぎて、
いまいち理解ができません。
初歩的な質問ですが、お答え頂けると助かります。

5. 役職に用いる無冠詞

役職やポジションを表す名詞には無冠詞を使う。無冠詞が「その人物=その役職」の同一感を表現するからと考えられる。

director of the program (そのプログラムのディレクター)
Dr. Joe (ジョー博士)

この同一感というのは、

directer = the program

Dr = Joe

というイメージでしょうか?

逆に、

あのディレクターは忙しい、というように特定する場合は、

The director is busy .

ディレクター全般は忙しい、という場合には、

A director is busy . または Directors are busy .

というイメージで良いのでしょうか?

また、

6. 親近感がある名詞に用いる無冠詞

無冠詞の持つ同一感のイメージは、時間や場所を表現する際に使うこともできる。

例えば、dinner(夕食)、summer(夏)、next week(来週)などの単語は、通常無冠詞で使われている。これは、英語に世界において話し手が心理的な同一感、言い換えれば親近感を抱いているからである。

Let’s talk after dinner. (夕食の後に話しましょう。)

話し手Aと受けてBは「夕食」という共通のイメージがあるため、同一感のある無冠詞。

I’ll see you next week. (来週会いましょう。)

同様に、話し手Aと受けてBは「来週」という共通のイメージがあるため、同一感のある無冠詞が
使用されているという捉え方で宜しいでしょうか?

仮に、時間感覚の異なる、火星人と地球人が地球で会う場合、
認識が共通ではなくなるため、

I’ll see you next the week on the earth.

特定の(地球時間の来週)来週に会いましょうと、
the をつける使い方で宜しいでしょうか?

田邉竜彦

>andou1221様

ご質問ありがとうございます。
英文法は解明されていないものが多いため、私の推測も含め、解答させていただきます。

まず、役職が無冠詞になる場合ですが、director of the programは「Xさん=director of the program」の解釈になります。directorにtheをつけなくても、そのプログラムの役職であることは明確であるため、無冠詞を使用すると考えられます。

「あのディレクターは忙しい」で特定の人物を指す場合はthe、世間のディレクターと呼ばれる人一般であればA directorかDirectorsが、いわゆる総称表現として使用できます(お作りいただいた例文なら、Directorsのほうが自然な気がします)。

dinner(夕食)、summer(夏)、next week(来週)等が無冠詞で使われるのが多いのは、ご指摘のイメージに近いです。
theが使われなくても特定できるほど、話者同士の認知において共通した存在と思われるからです。

earth(地球)に関してはもともとtheをつけて使うことが多いので、「火星人と地球人が地球で会う場合」を先のnext week(来週)の例で説明するなら、おそらくそれでもtheは使われないような気がします。
theはあくまで話者と聞き手が物事を特定できる場合に使う冠詞なので、火星人(=話し手と共有知識を持たない人)に文脈なしにtheを使うと、「どのnext week?」といった話になってしまいます。

尚、冠詞は慣習で使用されている側面が大きいです。また、文脈によって解釈と用法が大きく異なってしまいます。
そのため、本稿で述べた内容だけでは説明できないケースもあります。この辺りが英語の難しいところですね…

ご参考にしていただけると幸いです。

andou1221

回答ありがとうございます。

何となく、ですが、イメージが掴めました。

役職については、こう言う理解で宜しいでしょうか?

The teacher is good teaher .

あの先生は、良い教師です。

(弁護士とかお医者さんを、先生、先生、と人間の呼称として使用する時は、冠詞がつく、逆に概念としての役職はつけない)

火星人も確かにおっしゃる通りかと思います。

両方とも無冠詞なら、互いに地球時間の来週、火星時間の来週にやって来るので、会うことはない。

地球時間が、上記の例文で、the next week とつけても、初めて会う火星人には分からないが、

何度も地球で会っているオッチョコチョイの火星人に念を押す意味で伝えたい時は、

I say again , I’ll see you next the week.

という使い方でも良いということでしょうか?

田邉竜彦

>andou1221様

ご質問ありがとうございます。

役職における冠詞ですが、文脈によってa, the, 無冠詞のすべての可能性があり得ます。
役職が無冠詞になるのは、elect, appoint, become, be等の特定の動詞の直後、かつその組織・団体に1つしかその役職がない場合が多いです。
(=1つか役職がないので「同一感」が感じられる)

したがって、次の3つの文はどれも文法的には適正と考えられます。

He is a headteacher. (彼は校長である)
He is the headteacher of our school. (彼は私たちの学校の校長である)
He is headteacher of our school. (彼は私たちの学校の校長である)

他にも役職が無冠詞として使われる例は
John is captain of the football team. (ジョンはそのフットボールチームのキャプテンである)
John was appointed chairman of the charity. (ジョンはそのチャリティーの議長に任命された)
John started working as CEO last week. (ジョンは先週CEOとして働きはじめた)
といった場合になります。

これは明確な理由があるというより、慣習で使用されている面が大きいです。

「来週」を表すnext weekですが、既に話題に出てきた特定の「next week」であれば、the next weekと言えるかと思います。
theは「その」と訳されますが、機能としては話し手と聞き手が物事を特定する参照点となります。

andou1221

丁寧な回答ありがとうございます。

だいたいの大まかなイメージ像をつかむことができました。

田邉竜彦

>andou122様

お役に立てたようで光栄です。

ko4born

質問させていただきます

Economic circumstances in Asia are different from (those )in the West.

この(those)を元の英語であらあわすとthe economic circumstancesとなり、特定の複数名詞を表す

という解説があったのですがなぜ始めのeconomic〜にはtheがつかないのでしょうか

よろしくお願いします。

田邉竜彦

>ko4born様

ご質問ありがとうございます。

まず、文頭のEconomic circumstancesにtheが伴われるか否かと、thoseが指し示す対象物について、分けて考えてみます。

文頭のEconomic circumstancesに関しては、theがついていないことから、一般論としての「アジアの経済状況」を示していると思われます。

次に、those in the Westは「西洋のそれら」の意味を表します。
thoseには「特定」のニュアンスが含まれているため、「それら=経済状況」であり、「アジアの経済状況」と「西洋の経済状況」を文中で対比させていることがわかります。

そのため、thoseはthe economic circumstancesを指す、という解説だったのではないでしょうか。
(ただ、thoseが「the economic circumstances」と「economic circumstances」のどちらを指すかは際どいところです。人にとって解釈が分かれると思います)

尚、thoseはこのように、文中(あるいは直前の文)の同じ対象物を特定する際に使われる語句です。
仮に、thoseの代わりにonesを入れてしまうと、西洋の何がアジアの経済状況と異なるのかが、不明確になってしまいます。

A

とてもわかりやすかったです。現在、認知文法の授業で、冠詞から読み取る英語話者と日本語話者の認知過程の違いについてレポートを書こうと思っているのですが、もし参考になるような書籍などがあれば何でもいいので教えていただきたいです!

田邉竜彦

>A様

お褒めのコメントありがとうございます。
認知文法の授業を受けていらっしゃるのですね。羨ましいです笑

認知文法の視点から見た冠詞(および名詞)に関しては、以下の文献が参考になると思います。

今井 『イメージで捉える感覚英文法』の第7章
https://www.amazon.co.jp/dp/4758925208

テイラー・瀬戸 『認知文法のエッセンス』の第10章
https://www.amazon.co.jp/dp/4469213225/

Radden&Dirven 『Cognitive English Grammar』のPart2
https://www.amazon.co.jp/dp/9027219044/

1冊目は初級、2冊目は中級、3冊目は上級編です。
ご参考まで…

恵ちゃん

例えば、次の例がよくわかりません。
1. The University of Tokyo, Kyoto University : 東大には冠詞がついて京大には冠詞がない。2. Sado island, The Izu Peninsula, 佐渡島には冠詞がつくが、伊豆半島には冠詞がない。以下同様に、in the morningとat night, 地図上ではSea of Japan, 文書の中ではthe Sea of Japan, 米語ではin the hospital, 英語ではin hospital, インフルエンザはhave the flu, 風邪を引くはhave a cold, 太陽はthe Sun, 火星Marsで冠詞なし、He plays the guitar, He plays bass。などなど、結局、冠詞の意味伝達上の目的は理解する必要がありますが、習慣的に覚えなければならない部分やその単語の文化的背景も理解する必要もあるので、理屈だけで理解するのは困難な様な気がしますがどうでしょうか。理屈で覚えようとしていることが返って、学習者の冠詞の理解を困難にしている面もあるのではと思っています。

田邉竜彦

コメントありがとうございます。

ご指摘のように、冠詞は習慣に依存する部分が大きいです。
例示いただいた表現に代表される一連の用法は、私たちノンネイティブにとって、大変大きな学習負荷をもたらしていると認識しています。

教授法は悩ましいところです。
この記事で書いたような「理論→使用例」で考えると、ご指摘のように、説明不足が生じる場合があります。
一方、用法を中心にすると、いわゆるかつての学校文法のような、暗記中心型になってしまわないかという、懸念が生まれます。

現在、冠詞その他に関する文献を読み返し、良い方法がないか模索しています。だいぶ後になってしまいそうですが、いずれこの記事を更新するつもりです。また機会があるとき、お読みいただけると幸いです。

Anne

基本的な事でお恥ずかしいのですが、質問させてください(>_<)

特定の場所ではなく、一般的に好きと言いたい場合
I like rivers.    ではなく I like the river.
I like beaches.   ではなく I like the beach. 
I like mountains.   ではなく I like the mountains.
が正しいと聞いたのですが、I like dogs は良くてこれらがダメな理由が分かりません。。
特定していないのに、なぜtheが必要なのでしょうか?
なぜmountainsだけ複数形なのでしょうか?

また、二人で会話をしていて聞き手が特定できない場合、
I have a friend who lives in a forest. She is ~~
私には森に住んでる友達がいます。彼女は~~(聞き手はどの森のことか分からない)

My father works in a mountain as an engineer.
私の父は山で技術者として働いています。 (聞き手はどの山のことか分からない)

I bought an apple at a market today.
私は今日市場でりんごを買いました。 (聞き手はどの市場のことか分からない)

I went swimming in a river with my family last weekend.
私は先週末、家族と川に泳ぎに行きました。 (聞き手はどの川のことか分からない)

上記のような表現は適切でしょうか?
もし違っていたら理由を教えて頂きたいです。

よろしくお願いいたします。

田邉竜彦

> Anne様

ご質問ありがとうございます。

a/an, the, 名詞の単数/複数形は、日本人にとっておそらく最も困難な文法項目の1つではないかと思います。

当方は英語のネイティブスピーカーではないため、直感的に正誤を判断するのが難しいのですが、当方の持っている知識で以下回答をいたします。

1. 特定の場所ではなく、一般的に好きと言いたい場合
・「川が好き」の「川」は、どこか特定の川を指すわけではなく、川という概念を示すため、モノの形から本質を抜き出すためにtheが使われているのではないかと考えます。
・the mountainはこの場合、単数形でも良い気がします…

2. 森に住んでいる友達の例文
・良い文だと思います!

3. 山で働いている父の例文とりんごを買ったの例文
・冠詞の使い方を意識されていますね。aの用法はいまのままで良いと思います。
・ただ、これは冠詞の問題と言うよりライティングの作法ですが、a mountainとan engineer(あるいはan appleとa market)のように、聞き手の知らない情報が連続すると、書き手が何を強調したいのか、見えにくくなります。
・例えば「◯◯山で…」や「隣町の市場で…」のように情報量を増やすと、より伝わりやすい文になりますよ。

4. 川に泳ぎに行ったの例文
・aの用法としては適切だと思います。
・ただ、以下のように書いたほうが自然な英文になる気がします。

My family and I enjoyed swimming in the Tonegawa river last weekend.

p.s. 英文は文脈に依存するため、上記の文よりも自然なセンテンスは作れると思います。あくまでご参考程度にお考えください。

Anne

迅速なご返答ありがとうございます。

以前ネイティブスピーカーの友人に同じ質問をしたところ、感覚で話しているから説明が出来ないと言われてしまい、困りました(>_<)
日本人にとっては難しい部分ではありますが、頂いたアドバイスを参考にこれからも勉強頑張ります。
ありがとうございました。

TAKU

冠詞で苦労している者です。。

the smell of rosesで香りは「バラ」であるのを特定してるのでtheをつけるという意味は理解出来ました。
そこで以下の名言について質問です。
A journey of a thousand miles begins with a single step
この場合もjourneyは「a thousand miles」であると特定してるのになぜa journeyなのでしょうか?
またa single stepも第一歩というのは唯一の一歩なので、the single stepだと思うのですが、a single stepではない理由とthe single stepとのニュアンス(意味)の違いを教えてください。

田邉竜彦

>TAKU様

コメントありがとうございます。

A journey of a thousand miles begins with a single step.のような名言は表現として固定されている場合が多いですが、冠詞について分析すると、以下のようになります。

1. A journey

やや無理に解釈すると、数千マイルの旅は1つではない、といったニュアンスでしょうか。

尚、言語のデータベースで検索をしたところ、The journey of a thousand milesと言っているものもありました。

The journey of a thousand miles starts with a single step.

2. a single step

a single stepには、世の中には様々なsingle stepがありますが、そのうちどれでもいいので1つのステップをすれば旅が始まる、といったニュアンスがある気がします。

(the single stepは「特定の第一歩」が示唆されます。)

TAKU

早速お返事いただきましてありがとうございます。
大変勉強になりました。
こういう「文脈から読み解く力」「ニュアンスから感じ取る力」はルールや方式がある訳では無いので苦労します。
地道に数をこなすことでしか養えない力でしょうか?

田邉竜彦

>TAKU様

コメントありがとうございます。
これは難しい問題ですね。

1つには、ご指摘のように数をこなすことで直感的に判断する力を養うことです。

もう1つは「英語はすべてを文法で説明できるわけではない」と割り切ってしまうことかもしれません…

特に、冠詞は話し手の意図で選択が変わります。
「ある状況下ではa/theが好まれる」から、「a/theが使われていることからXXと解釈する」と発想を変えると、(根本的な解決にはならないかもしれませんが)、英語を学ぶ上での疑問に対応しやすくなるかなと考えます。

TAKU

お返事遅くなりました。
「英語はすべてを文法で説明できるわけではない」というコメントと冠詞は話し手次第という点に納得出来ました。
これは日本語にも共通する点かなと思います。

「the smell of roses」という当ページの例題もそうなのですが、参考書の冠詞の部分の例題でも「the 名詞 of 名詞の複数形」という形式を多く見られます。
ofの後ろを名詞の複数形にするのには何か訳があるのでしょうか?
細かな点で申し訳ないのですが気になる点ですので教えてください。

田邉竜彦

>TAKU様

コメントありがとうございます。

「A of B」の構造では「AがBの一部」の意味があるので、Bが可算名詞の場合は複数形になることが多いです。

(AはBの部分集合なので、Bが多数であることが前提になります)

Nagoya

Theと無冠詞の違いが良く分からなくなったので質問させて頂きます。
この前”Father of the nation (国父)”という表現を見かけたのですが別の表現では”The father of the nation”とfatherにtheが付いていました。この場合無冠詞のfatherは抽象化されていて、the fatherはof the nationが付いているために特定化されているということなのでしょうか?
また 「名詞 of 名詞」という表現をする時に毎回 theや冠詞の付け方で迷ってしまうのですが、 The 名詞 of 名詞と
ofの前の名詞にしかtheが付いていない表現が多いように感じます。このような時の冠詞の付け方がいまいち良く分からないです….
漠然とした質問になってしまい申し訳ないのですがよろしくお願いします。

田邉竜彦

ご質問ありがとうございます。

Father of the nationに関して、言語のデータベースで調べたところ、不定冠詞あり、定冠詞あり、冠詞なしの3パターンがありました。

a father of the nation
the father of the nation
father of the nation

見たところ、theつきがもっとも多く、次に冠詞なしで、aのあるタイプは極めて少数です。

この点に関しては的確な答えがすぐに出せないので、追加調査をして、いずれ本記事で発表したいと思います。

2つ目の「名詞A of 名詞B」ですが、名詞Aは名詞Bの一部分といった内容なら特定可能なので、theがつきます。

例えば、the result of the debate(ディベートの結果)であれば、ここで言う「結果」はそのディベートから生まれたものに限定されるので、theがつくと考えられます。

「名詞A of 名詞B」の名詞Bは通常の名詞と同じように、場合によってthe, 無冠詞の選択が変わります。

例:
the role of the teacher (名詞Bがthe: 教師の役割)
the people of Wales (名詞Bが固有名詞で無冠詞: Walesの人々)
a good source of background information (名詞Bが普通名詞で無冠詞: 背景知識の良い情報源)

ご参考にしていただけると幸いです。

(例はOxford Advanced Learner’s Dictionaryから抜粋)

Nagoy

お返事遅くなってすみません。
A of Bに関しては何となくですがイメージが掴めました。
冠詞はまだまだ苦手なので分からない点があればまた質問させて頂けると有り難いです。
返信して頂きありがとうございました。

うってぃ

モヤモヤがとけました。ありがとうございます。

友達にも紹介しようと思います。

匿名希望2

なんかいってくださいよう。
これのおかげで試験とれたんでっせ!

田邉竜彦

>匿名希望2様

お返事が遅れて失礼しました。

お役に立てたこと、嬉しく思います。

(前のコメントは読んでいました。また何かあればいつでもコメントください^^)

Yugo

現在スペイン語を勉強している者ですが、西語文法についてかゆい所に手が届く解説というのがなかなかなく、一方で西語と英語は文法面で共通点が多いことから、英文法としての冠詞の解説を探しているうちに、こちらに辿り着きました。
非常に緻密な分析をされていて、冠詞の理解の大きな手助けになりました。

先生が記事を書かれてから数年経っても丁寧に質問に答えておられて、自分と同様の疑問を抱いている質問とその回答を読むと理解が進むので、非常に有益で助かっています。

【無冠詞の同一感】について質問があります。
この「同一感」という言葉が何度読んでもピンときませんでした。おそらく、当該名詞と「何」が同一なのかが理解できなかったからだと思います。

〈固有名詞系〉
Japan:ユーラシア大陸と台湾と太平洋に囲まれた島々、すなわちJapan
Tokyo:○○○○、すなわちTokyo
Milk:○○○○、すなわちMilk
〈役職系〉
director of the program:藤村さん、すなわちdirector
Dr. Nakamatsu:中松さん、すなわちDr.
〈いつものアレ系〉
dinner:いつも夜に食べるアレ、すなわちdinner
next week:いつも過ごしている日々のまた繰り返すヤツ、すなわちnext week
winter:くる年もくる年も訪れるあの寒い季節、すなわちwinter
home:いつも過ごしているあの場所、すなわちhome

ということでしょうか?
「Japan」「Tokyo」「Milk」のような唯一無二の固有名詞が、「何」と同一感を醸し出しているのかがイマイチよく分かりません。
また、「director」の同一感の対象は、「of the program」の中にあるのではなく、その「director」である人物のことを指しているのでしょうか?

よろしくお願い致します。

田邉竜彦

Yugo様

コメントありがとうございます。
当方の記事がお役に立てたようで光栄です。

無冠詞の持つ「同一感」についてですが、これは「語の指し示す概念が唯一無二であり、他に存在しない」という意味と考えます。

例えば、Japanは「日本」という国を指します。

日本は本州をはじめとする複数の島から成り、約1億2千万人の人が暮らし、日本語が主に話される場所である、といった様々な要素の複合が日本という概念を形成しています。

ここで、気候変動や何かしらの政治的理由があって、国家としての日本が所有する島の数が変わったとします。あるいは、人口動態の変化により人々の構成に変化があったとしましょう。

それでも、日本という概念そのものは変わりません。土地の面積、人口、言語、その他の要素が変わっても、日本は他の何物とも異なる、日本であり続けます。これが「同一感」ではないかと考えます。

話は少し変わりますが、英語では固有名詞に定冠詞theをつける用法もあります。

下の例は「その」を意味するtheにより、同一感を除外し、「私の知っている日本」を意味しています。

I know the Japan that created amazing electric appliances.
(私は驚くべき電化製品を作っていた日本を知っている)

こうした用法があることからも、無冠詞の「同一感」は「その概念が唯一無二である(= aやtheでその内容を指定しなくても良い)」と考えます。

役職(director of X)や時間(today)などの用法については、歴史的な経緯も関連しているようなので、当方でも引き続き調査する予定です。

ご参考になれば幸いです。

Yugo

非常に参考になりました。ありがとうございます!

つまり「同一感」とは言い換えると、
「不変」「永遠」とか「変わらないもの」、
「そう簡単には消えたりしない安心感」みたいな
ジュエリーの宣伝文句によくありそうな感じのイメージでしょうか。

田邉竜彦

>Yugo様

一言であらわせば「定義によって一様なもの」でしょうか。

tom

下記の冠詞の使い方はあっていますか?

eat a chikenでは「一匹の鶏」の意味になり、不自然な英文なのですよね。
それでは eat a cooked chickenですと、日本語で意味するような「(料理された)鶏肉を食べた」の意味として、ネイティブに伝わるでしょうか?

田邉竜彦

>tom様

こんにちは、ご質問ありがとうございます。

「(料理された)鶏肉を食べた」ですが、この場合も冠詞なし(=aを用いない)で良いかと思います。

ゼロ冠詞と本質的な機能を指すTheの違いがよく分からないです。

ゼロ冠詞→その物の本来の意味を抽象的な概念を表す
prison(刑務所)であれば、犯罪者が罪をつぐなう施設という概念を表す

本質的な機能を指すThe→その物の本来の機能も引き出す(含意する)
glay the guitar(ギター)であれば、ただギターを弾くのではなく、音楽を奏でる芸術表現をしていることも意味する。

a guitarなら、ただギターを表す
guitar なら、指板と6本の弦を持つ弦楽器という(抽象的な)概念を表す
the guitarなら、ただギターを表すだけでなく、音楽による芸術表現をするものという意味を含む。

というようなことでしょうか?

田邉竜彦

>蘭様

コメントありがとうございます。

ご指摘の解釈に近いと思います。

ただ、この解釈はあらゆる名詞に必ずしも当てはまるとは限らず、たとえばguitarの場合は無冠詞で使うことは通例、あまりないのではないかと思います。

この辺り、語の慣習的な用法で決まることも多いので、なかなか一筋縄ではいかないですね…

もっさん

ここに書いてあるようなことは知識として知っていますが、それでもやはり非ネイティブには理解できない使い方が多いですね。
例えば「企業」を表す可算名詞の「business」一つとっても「なぜそこでtheを使うの?」「この時はaと言ってたのに(特に特定されているようでもないのに)ここではなぜtheを使うの?どう違うの?」みたいなことは多々あります。
TOEICは満点ですが、それでもわかりません。

ネイティブに聞いても「それが自然だから」しか言われないことも多いですし。

これはもう、例えば日本人が助詞の「は」と「が」の使い方を『「は」の場合は不特定多数の中で主語が取る行動を示していて、「が」の場合は主語に限定している。だから「誰が行く?」という問いに対して「私は行く」だと他にも行く人がいる可能性を意識していることを示していて、「私が行く」だと他の人ではなく「私」が行くことにフォーカスしている』みたいな面倒くさいことをいちいち考えなくても誰もが「違和感」や「自然」みたいな感覚で使い分けられるているように、ネイティブレベルにまで時間と経験を積まないと永遠に(全く英語と異なる体系の母国語を持つ)非ネイティブには理解できないんだろうなあと思っています。

田邉竜彦

>もっさんさん

コメントありがとうございます。

ご指摘の点は私も非常によく理解できます。

businessの例はそうですよね。

あとは、たまたま手元の辞書から見つけましたが、gift(才能)やeffort(努力)などはaとtheのいずれもつきますが、それで似たような意味になったりと、非母語話者にとって、苦労することばかりです。

冠詞については現在研究中なので、まとまった記事を別途、書きたいと思います。

go to schoolが無冠詞なのは、ゼロ冠詞のprisonが「犯罪者が罪をつぐなう施設」という機能を表すのと同様に、ゼロ冠詞のschoolで、「教育をする施設」という機能を表しているからですか?

田邉竜彦

>蘭様

そのとおりです!

「建物としての学校に行く」ではなく、「(学校に)学びに行く」という意味なので無冠詞になります。

秀ちゃん

$20 per man 一人につき20ドル
800 bushels per acre エーカー当たり800ブッシェル

質問
per の後は無冠詞になるのは、その名詞が単位を表しているため、個体性が薄まるからですか?
per man の場合は、ある一人の男性というよりも、男性1人という単位区分という意味になる。

田邉竜彦

>秀ちゃん様

per man、あるいはper personに関して、『現代英語冠詞事典』には次のような説明と例文があります。

—————-
a(per) day(cup)などという表現では、何月何日とか、どんな色のカップかという特定のものを指すのではないので、冠詞はとらない。(p378)

How many hours do you work per day? (p379)
—————-

ここからは私見ですが、たしかに単位では個体性というニュアンスが薄まり、ある一人の人ではなく、人という抽象的な概念になるので、不定冠詞が不要と考えられますね。

秀ちゃん

「私は、暁星という名の学校に通った」 I went to a school called “Gyosei”.
「私が通った学校は、暁星でした」
The school I went to was “Gyosei”.

前者は、不特定の学校→不定冠詞
後者は、“限定”された学校→定冠詞

これはなぜなのでしょうか?
後者が特定されるのは納得ですが、前者も“暁星という“が付いており、特定されているように感じるのですが…

“暁星という学校”では、相手はどこの学校だと1つに特定出来ない(その学校を知らなかったり、同じ名前の学校があるかも)からでしょうか?

田邉竜彦

>秀ちゃん様

I went to a school called “Gyosei”.の文ですが、学校の話が初出なので、aにしているものと思われます。
(呼ばれているぐらいであれば限定表現としては弱いので、aでOK)

尚、これをthe school…にすることも可能です。

ただ、そうすると、既に話し手が聞き手に学校に行っていた旨を伝えており、「そのスクールは暁星と呼ばれている」という感じになります。

一方、The school I went to was “Gyosei”であれば、I went toがthe schoolを限定しています。
行っていたという強い意味での限定になるので、aだと不自然という判断でしょうか。

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