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英語の受動態とは、「be+過去分詞」の形で「…される」を表す動詞の用法である。受身形とも呼ばれる。
筆者は英語スクールを運営しているが、受動態に関する質問をよくいただく。英語を勉強しているあなたは、次のような悩みを持っていないだろうか?
- そもそも受動態についてよくわかっていない…
- 受動態と過去分詞の違いは…?
- TOEICで受動態を問われる問題が苦手…
そこでトイグルでは、英語の受動態について詳しく解説していく。受動態によくある3つの疑問とその答えも述べるので、学習の参考になるはずだ。
1. 受動態を使う理由は受動者を話題にするため
私たちが何かをする際、そこにはたいてい「動作をする側」と「動作をされる側」といった、2種類の人(物)が関与する。通常、「XがYにZした」のように、動作をする側を主題に文を作ることが多い。
日本語の例で考えてみよう。以下の例文はそれぞれ、同一の事態を異なる視点で表したものである:
- 健二はドアを壊しました(話題は動作をする側)
- ドアは健二によって壊されました(話題は動作をされる側)
私たちは普段、こうした使い分けを文脈に応じてごく自然に行っている。
例えば、「健二はドアを壊しました」は「健二は昨日どんな事件を起こしたんだ?」の答えとして適切だろう。また、「ドアは健二によって壊されました」は「ドアに何が起こったんだ?」の答えにふさわしい。
この時、動作をする側が主題の文を能動態、動作をされる側が主題の文を受動態と言う。受動態を用いる理由は、動作をされる側を話題にするからである。
英語でも同様である。多くの場合、文は能動態・受動態のどちらでも作れる。しかし、これは単に「書き換えができる」といった形式上の問題ではなく、根本的には文の話題が異なることで生じるものに他ならない。
- Kenji broke the door. (健二がドアを壊した)
- The door was broken by Kenji. (ドアは健二によって壊された)
したがって、英語の勉強中に受動態の文を見かけたら、「話し手は何らかの理由で受動態を選んでいる。この文は受動態によってどのような意味になるだろう?」と考えてみると良い。受動態は形よりも意味でアプローチすること、これが受動態を理解する最善の方法である。
それでは、英語の受動態はどのような使い方があるのだろうか? 以下、詳細を見ていこう。
2. 受動態の文の作り方
受動態の文の作り方を説明しよう。ここでは、能動態の文を受動態に変形させるプロセスを取り上げる。
- 能動態: The cat broke the vase. (猫が花瓶を壊した)
- 受動態: The vase was broken by the cat. (花瓶は猫によって壊された)
ステップ1. 受動者(物)を主語にする
受動態の文をつくる第1ステップとして主語を設定しよう。受動態の主語になるのは、能動態の動詞の直後にある名詞句である。
例文はthe vase(花瓶)が動詞直後の名詞句だったので、これを主語とする。
- The vase
ステップ2. 動詞をbe+過去分詞にする
第2ステップとして動詞を設定しよう。受動態は<be動詞+動詞の過去分詞>であり、時制はbe動詞に合わせる。
例文はbroke(壊した)が動詞だっので、be動詞はwas(過去時制)、過去分詞はbroken(動詞breakの過去分詞)とする。
- The vase was broken
ステップ3. 必要に応じてbyをつける
第3ステップとしてbyを用いて行為者を表す。byは「…によって」の意味で、能動態の主語と一致する。
例文はThe cat(その猫)が主語だったので、by the catで文が完成する。
- The vase was broken by the cat. (花瓶は猫によって壊された)
3. 受動態の基本的な使い方
受動態の使い方をパターン別に紹介していこう。
3-1. 現在時制×受動態
- Japanese currency is called yen. (日本の通貨は円と呼ばれている)
受動態は現在時制で用いられる。例文は「日本の通貨は円と呼ばれている」の意味。
日本の通貨を円と呼ぶのは、特定の人々に限った話ではない。それを円と呼ぶと決めれば、日本人だけでなく、世界の人々がyen(円)と呼べる。
こうした文脈では、「誰が通貨を円と呼ぶか」よりも「通貨が何と呼ばれるか」が問題となる。そのため、文は受動態が自然。
3-2. 過去時制×受動態
- A $30 Amazon gift card was sent to Adam. (30ドルのアマゾンギフトカードがアダムに送られた)
受動態は過去時制でも用いられる。例文は「30ドルのアマゾンギフトカードがアダムに送られた」の意味。
今のところ、ギフトカードを送れるのは人間に限られている(ロボットは郵便物を送れない)。人間には名前があるから、「クリスがアダムにカードを送った」のように、能動態で文をつくっても差し支えない。
しかし、ここでギフトカードが送られたのは、アダムがアンケートか何か答えた結果だとしよう。ギフトカードは調査会社から送られるが、そうれあれば郵便を作成した人物名は必ずしも重要ではない。
そうすれば、話の焦点は「誰がギフトカードを送ったか」よりも「何が送られたか(あるいは誰に対して送られたか)」になる。例文はギフトカードに焦点が置かれており、受動態が使用された。
3-3. 進行形×受動態
- The new wind system is being developed. (新しい風力システムが開発されているところだ)
受動態は進行形でも用いられる。例文は「新しい風力システムが開発されているところだ」の意味。
風力システムを開発しているのは人間(あるいはチーム)である。人やチームには名前があるから、「Z社の技術チームが開発している」のように能動態で書いても差し支えない。
ただ、こうした事態では開発者名がわからないことが往々にしてある。また、たとえそれが明らかでも、「誰が開発したか」より「何が開発されたか」を焦点にしたいこともある。
例文は行為者が省略され、受動態で「開発されているところだ」の意味。
3-4. 完了形×受動態
- Some changes have been made. (いくつかの変更が行われた)
受動態は完了形でも用いられる。例文は「いくつかの変更が行われた」の意味。
変更をしたのは人間である。人間には名前があるから、「ジョージらが変更した」と能動態で書いても差し支えない。
しかし、変更したのが誰かわからない時、あるいは変更者の名前より変更そのものを話題にするのであれば、「いくつかの変更」を主語にして文をつくれる。したがって、例文は受動態が使われている。
3-5. 法助動詞×受動態
- The tests can be done in less than an hour. (テストは1時間以内に行われる)
受動態は法助動詞と共に用いられる。例文は「テストは1時間以内に行われる」の意味。
テストは人間によって管理・監督されるが、テストそのものは「行われる」ものである。今はテストの実施が問題となるので、受動態が自然。
4. 受動態を使った構文
受動態がどのように使われるか、構文別に見ていくことにしよう。
4-1. SVOの受動態
- The broken door was repaired by Franklin. (その壊れたドアはフランクリンによって修理された)
- Jane is respected by everyone. (ジェーンはみんなから尊敬されている)
SVOは「主語+動詞+目的語」で第3文型と呼ばれる。SVOの文は目的語(O)を主語とすることにより、受動態をつくれる。
例文(上)は行為を受けた側(壊れたドア)が主語、行為をした側(フランクリン)が目的語。能動態で書くとFranklin repaired the broken door.(フランクリンはドアを修理した)となる。
例文(下)は経験を受けた人(ジェーン)が主語、それをした人(みんな)が目的語。能動態で書くとEveryone respects Jane.(みんながジェーンを尊敬している)となる。
4-2. SVOOの受動態
- George gave Olivia the books. (ジョージはオリビアに本を与えた)
- → The books were given Olivia by George. (本はジョージによってオリビアに与えられた)
- → Olivia was given the books by George. (オリビアはジョージによって本を与えられた)
SVOOは「主語+動詞+間接目的語+直接目的語」で第4文型と呼ばれる。SVOOの文は直接目的語を主語にする場合と、間接目的語を主語にする場合で、2通りの受動態がつくれる。
例文(上)は直接目的語(the books)を主語に文をつくった場合。「本はジョージによってオリビアに与えられた」の意味。
例文(下)は間接目的語(Olivia)を主語に文をつくった場合。「オリビアはジョージによって本を与えられた」の意味。
4-3. SVOCの受動態
- The fence was painted black. (フェンスは黒色に塗られた)
- I was told to wait. (待つように言われた)
SVOCは「主語+動詞+目的語+補語」で第5文型と呼ばれる。SVOCの文は目的語(O)を主語とすることにより、受動態をつくれる。
例文(上)は目的補語(C)が形容詞(black)の場合。行為者が示されていないが、能動態で書けばSomeone painted the fence black.(誰かがフェンスを黒色に塗った)となる。
例文(下)は目的補語(C)が不定詞(to wait)の場合。こちらも行為者が示されていないが、能動態で書けばSomeone told me to wait.(誰かが私に待つよう言った)となる。
5. 受動態のさまざまな用法
受動態にかんする他の用法をダイジェスト的に紹介したい。
5-1. 不定詞の受動態
- Further research needs to be conducted. (さらなる研究が行われる必要がある)
受動態は不定詞にも使える。例文は「さらなる研究が行われる必要がある」の意味。
5-2. 動名詞の受動態
- Linda doesn’t like being kept waiting for her food. (リンダは食事で待たされるのは好きではない)
受動態は動名詞にも使える。例文は「リンダは食事で待たされるのは好きではない」の意味。
5-3. get 受動態
- Jason got arrested for shoplifting. (ジェイソンは万引きで逮捕された)
be動詞の代わりにgetを使うことで、受動態を作ることがある。
get受動態はbe受動態と比べて出現頻度が少ない。使用場面は文章よりも会話中心で、とりわけカジュアルな場面。主語に何かの責任があるような時に用いる。
5-4. have 受動態
- I had my bag stolen in the library. (図書館で鞄を盗まれた)
「have+目的語+過去分詞」で受け身の意味を表すことがある。この意味の場合、被害など、悪い出来事に使うことが多い。
5-5. 動作受動態と状態受動態
- The library was closed at 3 p.m. yesterday. (図書館は昨日3時に閉まった)
- The library was closed all day yesterday. (図書館は昨日一日中閉まっていた)
受動態はその意味によって、動作を表す受動態と状態を表す受動態に分かれる。
例文(上)は「3時に閉まった」の意味で動作を表している。一方、例文(下)は「閉まっていた」の意味で状態を表している。どちらもwas closedであるが、ニュアンスが異なる点に注意しよう。
6. 受動態で必ずぶつかる3つの疑問とその答え
受動態は英語学習者が必ずつまずく文法と言っても過言ではない。他の文法は比較的理解できるのに、受動態だけがわからない…といった悩みを持つ方が多い。
そこで、ここでは受動態の学習中に必ずぶつかる3つの疑問と、筆者なりの答えを述べていく。参考にしてほしい。
6-1. TOEIC文法問題で受動態を選ぶコツ
TOEIC Part5(短文穴埋め問題)には、動詞の形を選ぶ問題がよく出題される。例を見てみよう:
- Any proposal will _____ if the deadline for submission is not met.
- (A) reject
- (B) rejected
- (C) be rejecting
- (D) be rejected
正解は(D)be rejected。「提出期限に間に合わなかったら、あらゆる提案は却下されるだろう」の意味。
動詞問題を語の形で選ぼうとすると、間違えることが多い。「能動態 = 直後に目的語がある」、「受動態 = 直後に目的語がない」のように形で対処すると、自動詞が使われる場合はどうなるのか、直後にto不定詞、前置詞、that節などがあったらどうするのかなど、判断事項が山積みになる。
動詞問題を解くポイントは文の意味から逆算して考えることにある。先ほどの例で言えば、「提案が(何かを)拒絶する」と「提案が(誰かに)拒絶される」のどちらが良いかと言えば、自然に後者(受動態)を選べるに違いない。
受動態の意味は、この記事の『3. 受動態の基本的な使い方』で説明したので、TOEICの受験予定がある方は、ぜひとも再読いただきたい。
6-2. 過去分詞とは何か? 受動態と現在完了の違いは?
受動態でわからなくなってしまう大きな原因に過去分詞がある。過去分詞は動詞の活用の1つで、love-loved-lovedのように規則変化するものと、build-built-builtのように不規則変化するものがある。
英語の過去分詞は4つの使い方がある:
- 受動態
- 完了形
- 分詞形容詞
- 分詞構文
端的に言えば、「過去分詞は動詞の形を変化させたもの。受動態を作るには過去分詞を使い、過去分詞は受動態も含めた4つの用法がある」と覚えると良い。
さて、過去分詞は様々な用法で使われるが、共通するのが「動詞のプロセスの最終段階」のニュアンスである。受動態と完了形の例を比べてみよう:
- I was given a desk. (受動態: 私はデスクを与えられた)
- I have given you an example. (完了形: 私はあなたに例を与えた)
受動態は動詞の行為の最終地点、すなわち対象者が主語になったものである。例文(上)の「(誰かが)私にデスクを与える」は、私が与えるという行為の最終地点にいることを意味する。
完了形は時間的な最終地点、すなわち動作が終わったことを表す。例文(下)は「私があなたに例を与える動作を完了した(=現在完了)」と解釈する。
このように、過去分詞は最終段階のニュアンスで一致していると理解すれば、用法を覚えやすくなる。受動態と分詞形容詞の違いは、この後説明する。
6-3. 分詞形容詞と動詞の受動態を区別する方法
TOEICなどの資格試験を勉強していると、次のような説明を目にする:
- 「interestedは過去分詞の形容詞なので、正解は…」
過去分詞の形容詞とは何だろうか? 受動態の動詞とは何が違うだろうか? これらを理解するため、次の例文を見てみよう。
- The meeting is scheduled for August 28. (ミーティングは8月28日に予定されている)
- I am interested in marketing. (私はマーケティングに興味がある)
上の例文のscheduledは受動態の動詞だが、下の例文のinterestedは形容詞である。とりわけ、-ing形や-ed形の形容詞は分詞形容詞と呼ばれる。
動詞と分詞形容詞を見分けるには、「veryで修飾できるかテスト」をする方法がある。veryで修飾できれば分詞形容詞、修飾できなければ動詞と判別する。先ほどの例文で検証してみよう:
- × The meeting is very scheduled for August 28. (veryで修飾できないため動詞)
- ◯ I am very interested in marketing. (veryで修飾できるため形容詞)
上の例文はveryで修飾できないため動詞の受動態、下の例文はveryで修飾できるため分詞形容詞と考える。
ただ、私たち英語の非母語話者にとって、veryを入れた際に文が正しいかどうか、直感で判断するのは難しい。また、資格試験で問われた際、「veryで修飾できるかテスト」をいちいちする時間はない。
それでは、私たちはどのように文を判断すればいいのだろうか? 筆者個人の意見で言えば、TOEIC等の試験を解く場合に限定すれば、動詞-分詞形容詞の判断はさほど大きな意味はないと考える。
すなわち、それが動詞であろうと分詞形容詞であろうと、-ing形(現在分詞)であれば能動的な意味になり、-ed形(過去分詞)であれば受動的な意味になる。問題は「動詞か分詞形容詞か」ではなく、「現在分詞か過去分詞か」で解決するのだ。
先ほどの例であれば、それを動詞・分詞形容詞のどちらと判断しようと、正解は(B)interestedしかありえない(interestingは「興味を引き起こす」の意味):
- I am _____ in marketing.
- (A) interesting
- (B) interested
- (C) 省略
- (D) 省略
もちろん、英文を書くとなれば話は別である。ライティングは正確な文法力が要求されるから、動詞と分詞形容詞はきちんと区別しなければならない。リーディングであっても、上級者が文を正確に読むには違いを知ったほうがいい。
ただ、英語初級者・中級者の方であれば、「分詞形容詞というものが存在し、動詞とは区別される。ただ、正解を選ぶには-ingか-edで区別する」と知っておけば、取り急ぎ不便は生じない。以上が筆者の提案である。
*まとめ: 受動態をマスターしよう
この記事では英語の受動態について詳細を解説してきた。
内容をまとめると次のようになる:
- 受動態は<be+過去分詞>
- 受動態の意味は「…される/…された」
- 受動態は受動者を話題にするために使われる
- SVO, SVOO, SVOCなど様々な構文で使われる
- get受動態など派生的な用法もある
受動態は奥が深い。英語レベルが上がるとその都度必要な知識が増えてくる。受動態で悩んだらこの記事に戻ってきてほしい。きっと、あなたの求める答えが見つかるはずだ。
トイグルでは他にも、英文法に関する記事を執筆している。興味のある方はぜひご覧いただきたい。
Good luck!