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英語の主語とは、「何がどうする」の「何が」に該当する語句である。
例えば、I like comics.(私は漫画が好きです)なら、I(私)が文の主語となる。
英文法を学んでいると「主語」という言葉が頻繁に出てくるが、詳しく説明される場合は少ない。
そこでトイグルでは、英語の主語について詳細を解説していく。主語を見分ける3つの方法についても述べるため、英語初心者の方にも役立つはずだ。
1. 主語は「何が」に該当する箇所
私たちがことばを使って何かを表現する時、通常は複数の単語を組み合わせて文(センテンス)を作る。例えば、The baby is sleeping.と言えば、「赤ちゃんは寝ている」の意味になるだろう。
この時、文は単語をランダムに組み合わせるだけでは作れない。文には必ず構造があり、先ほどの例文なら大きく2つの部分に分けられる:
- The baby is sleeping. (赤ちゃんは寝ている)
- → [The baby] + [is sleeping]
この時、The babyの部分を主部、is sleepingの部分を述部と呼ぶ。文が「何がどうする」を表すとすれば、主部は「何が」、述部は「どうする」に該当する箇所だ。
主部や述部は複数の語で構成されるが、その中にもさらに中心となる箇所がある。先ほどのThe babyならbabyがその中心なのは明らかだ。この時、babyを主語と呼ぶ。
ここまでの話をまとめると、文には主部と述部があり、主部の中でも中心となる語が主語である。ただし、主部は複雑な構造を持つことがあり、主語とそれ以外に分けるのは往々にして困難だ。そこから、学習上はこれらを区別せず、主部=主語と考えて差し支えない。
この記事でも、以後は主部全体を指して主語と呼ぶ。The baby is sleeping.なら、The babyが文の主語である。
それでは、英語の主語はどのように使用するのだろうか? 以下、詳細を見ていこう。
2. 主語を見分ける方法
英語を読んだり聞いたりする際、主語を見分けられることは、文を正確に理解するために必要不可欠な能力である。
ここでは、英文の主語を見分ける3つの方法を紹介していこう。
2-1. 主語を語順で見分ける
主語を見分ける方法でもっとも汎用性が高いのが、語順を目安にする方法である。
一般的に、主語は文頭に出現することが多い。
- I can type 50 words a minute. (私は1分間に50ワードをタイプできる)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
主語はandなどの接続詞でつながれることもある。
- He and I are old friends. (彼と私は旧友だ)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
場合によっては、主語以外の要素が文頭に出現することがある。次の文では、Technically(専門的に言えば)は修飾語なので、文の主語はあくまでhe(彼)である。
- Technically, he is an excellent goalkeeper. (専門的に言えば, 彼は優秀なゴールキーパーだ)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
文頭に接続詞を使った節があらわれることもある。次の文では、Before(…の前に)は接続詞なので、ここでも文の主語はI(2番目に現れるほう)となる。
- Before I made a decision, I thought carefully about it.
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
2-2. 主語を語の形で見分ける
代名詞は位置によって語形が変わる。
例えば「私」は主語の位置ではIだが、目的語の位置ではusとなる。
- 主語: I am studying Chinese. (私は中国語を学んでいる)
- 目的語: She gave us a picture as a wedding present. (彼女は私たちに結婚のプレゼントとして絵をあげた)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
ここから、代名詞が主語であれば、その形によって見分けることができる。
- He was driving at 50 miles an hour. (彼は時速50マイルで運転していた)
- She can speak Spanish. (彼女はスペイン語を話せる)
- They were waiting at the airport. (彼らは空港で待っていた)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
2-3. 主語と動詞の一致で見分ける
英語では、主語の種類によって動詞の形が変わることがある。
例えば、主語が一人称(IかWe)あるいは二人称(You)で、かつ現在時制であれば、動詞はそのままの形で使われる。
- I work in the Sales Administration department. (私は販売管理部門で働いている)
- You need a password to get access to the computer system. (コンピュータシステムへのアクセス権を得るためにパスワードが必要だ)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
一方、主語が三人称単数かつ現在時制であれば、動詞の語尾に-s(あるいは-es)がつく(いわゆる三単現のs)。
- She works in sales and promotion. (彼女は販売促進部で働いている)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
逆に言えば、動詞に三単現のsがついていれば、主語は三人称かつ単数形のはずなので、それに該当するものを探せば良い、ということになる。
名詞にofなどの前置詞、あるいはwhoなどの関係代名詞がついている場合、主語が長くなる場合もある。こうしたときも、動詞との一致が主語を見分ける1つの基準となる。
- Much of our butter comes from New Zealand. (我々のバターの多くはニュージーランドから来ている)
- Those who used the products were generally satisfied with the quality. (その製品を使った人たちは概して品質に満足していた)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
3. 主語になれる要素
ほとんどの場合、主語になれる要素は名詞(例: book)と代名詞(例: we)である。主語は「何が」を表す語なので、これらの品詞と相性が良い。
また、主語は動名詞(例: working)、to不定詞(例: to work)、The+形容詞(例: the unemployed)、節(例: Whether…)なども使われる。
それぞれの用法について、例文と共に解説していこう。
3-1. 名詞
多くの名詞は主語になれる。
- Teachers must keep a record of students’ attendances. (先生たちは学生の出席の記録を取らなくてはならない)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
名詞にはa(1つの)やthe(その)などの冠詞がつくことがある。
- A lion is a dangerous animal. (ライオンは危険な動物だ)
- The nights are getting longer. (夜が長くなっている)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
3-2. 代名詞
多くの代名詞は主語になれる。
代名詞でもとりわけよく使われるのが、ヒトやモノを表す人称代名詞である。
- We met by accident at the airport. (我々は偶然空港で会った)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
「これ」や「あれ」を指す指示代名詞も主語になれる。
- This is probably his greatest scientific achievement. (これはおそらく彼の最大の科学的功績だ)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
「何か」や「誰か」を表す不定代名詞も主語になれる。
- Someone was beating a drum. (誰かがドラムを叩いている)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
3-3. 動名詞
動名詞も主語になれる。
- Working for yourself can be a chancy business. (自営業は不確実な仕事かもしれない)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
3-4. to不定詞
to不定詞も主語になれる。
- To be offered this job is quite an achievement. (この仕事を引き受けることは大きな達成だ)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
3-5. The+形容詞
特定の形容詞にtheをつけると、「…の人々」の意味で名詞的に用いることができる。The+形容詞は主語として使える。
- The unemployed are not a homogeneous group. (失業者は同質的なグループではない)
(Collins)
3-6. 節
Whetherなどを使った節も主語になれる。
- Whether we need more food depends on how many people turn up. (私たちがより多くの食料を必要とするかどうかは, どのくらいの人が姿を見せるかによる)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
4. 発展的な主語の用法
主語に関する発展的な用法を紹介しよう。
4-1. 主語itの使い方
通常、itは「それ」の意味で、前に出てきた名詞を指す際に使われる。一方、itにはより文法的な用法がある。
*天候・時刻のit
天候や時刻を表す時、意味的に主語は存在しない。そこで、英語ではitを用いることで主語を表す。
- It was raining yesterday. (昨日、雨だった)
- It’s ten o’clock. (10時です)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
*形式主語it
主語にto不定詞や節を用いれば、当然主語の語数が長くなる。主語が長いと文のバランスが悪くなるため、形式的にitを主語として使い、該当するto不定詞や節を後に配置することがある。
- It’s impossible to get there in time. (時間どおりにそこに着くのは不可能です)
- It appears that two leaders are holding secret talks. (2人のリーダーが秘密の会合を開いているのは明らかです)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
*強調構文のit
特定の語を強調するのに、it…thatの構文を用いることがある。
- It’s Spain that they’re going to, not Portugal. (彼らが行くのはスペインです、ポルトガルではありません)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
4-2. 主語There
Thereは「…がある」の意味で、未知のものや新情報を提示する際に使われる。
- There is: (単数のヒト・モノ・コト)がある
- There are: (複数のヒト・モノ・コト)がある
次の例文は「パーティーにはたくさんの人がいた」の意味。
- There were a lot of people at the party. (パーティーにはたくさんの人がいた)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
4-3. 無生物主語
英語の主語は、常にJohn(ジョン)やWe(私たち)などの生物とは限らない。主語はときに、News(ニュース)やWork(仕事)などの無生物もあり得る。
このように、生物でない主語を無生物主語と言う。例を見てみよう。
- The news made him very happy. (そのニュースは彼をとても嬉しい気持ちにさせた)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
主語はThe news(そのニュース)である。日本語では「モノがヒトを…させる」といった表現は一般的ではないが、英語ではこうした構文もごく普通に用いられる。
尚、無生物主語は主語を意味の面から捉え直したにすぎず、通常の主語と異なる特別な用法というわけではない。生物でも無生物でも、主語であることには何ら変わりはない。
4-4. 意味上の主語
意味上の主語とは、不定詞、分詞、動名詞などにおいて、動作や状態の主体となる存在を指す。不定詞の例を見てみよう。
- I am going to tell you a story. (私はあなたにお話をします)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
文の主語はI(私)である。いま、to tell you a storyに注目をすると、その主体(=意味上の主語)もIと考えられる(私があなたに話をする)。
別の例を見てみよう。
- She’s asked him to come to the party. (彼女は彼にパーティーに来るように尋ねた)
(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
文の主語はShe(彼女)である。いま、him to come to the party(パーティーに来るよう)に注目をすると、その主体(=意味上の主語)はShe(彼女)ではなく、him(彼)である(彼がパーティーに来るように…)。
このように、不定詞が使われている文では、文の主語と不定詞の意味上の主語が必ずしも一致するとは限らない。文の意味を正確に把握する知識として覚えておこう。
4-5. 英語の主語を省略する場合
英語は主語を明示的に表示する言語である。一方、限られた一部の場合、英語であっても主語を省略することがある。
主語の省略のもっとも典型的な例が命令文である。命令文では一般に、主語Youが省略されていると考える。
- Be quiet! (静かにしなさい)
- → (You) be quiet!
平叙文でも、一部の表現は主語を省略することがある。これらは特にくだけた会話で用いられる傾向がある。
- Told you so. (あなたにそう言いました)
- → (I) Told you so.
- Want a drink? (お飲み物は?)
- → (You) Want a drink?
- Doesn’t matter. (関係ないよ)
- → (It) Doesn’t matter.
(A Comprehensive Grammar of the English Language)
インターネットの掲示板やチャットアプリなどでも、主語の省略した文が見られる。
- ..am thinking of draining the carbs again.. (もう一度バイクのキャブレターを排水しようと考えている…)
(一般のWebサイトより抜粋)
まとめ: 主語を見抜いて文を理解する
この記事では、英語の主語について詳細を解説してきた。
内容をまとめると次のようになる。
- 主語は「何が」に該当する箇所
- 主語は語順、語形、動詞の一致などで見分ける
- 主語になれる要素は名詞・代名詞ほか様々
- 形式主語itや存在のthereなども主語になる
- 命令文など主語を省略する場合もある
英語の文を流暢に読めるようになるには、まずは文中の主語をきちんと理解できることが前提となる。主語を正しく識別して、文を正しく読んでいこう。
トイグルでは他にも、英文法に関する記事を執筆している。興味のある方はぜひご覧いただきたい。
Good luck!