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ディクテーションとは、英語の音声を書き取る勉強法である。
ディクテーションの狙いはリスニングの正確性を養うことである。音声の書き取りを通じて、英語の音を正しく判別できるようになる。
ディクテーションに興味を持ったあなたは、次のような疑問を持っていないだろうか?
- ディクテーションは英語初心者にも効果があるの?
- ディクテーションの正しいやり方は?
- ディクテーションに使えるおすすめ教材とは?
ディクテーションは日本人学習者に大変効果的な学習法である。実際、トイグルの主催するTOEICスクールはディクテーションを取り入れたところ、TOEICリスニングセクションでほぼ満点を取った社会人学習者、わずか1ヶ月半でTOEIC800点を超えた社会人学習者など、数々の成功事例を出してきた。
トイグルでは、ディクテーションのやり方を詳細に説明していく。この記事を読めば、今日からでもディクテーションを実践できるようになるはずだ。
1. ディクテーションが英語力向上に効果的な理由
私たちが英語のリスニングをする時、そのもっとも大きな障害となるのが音の識別能力である。英語は日本語と異なり、単語の音が連結したり、語尾の音が脱落することがあるから、センテンス内の単語を区別できないことが多い。
例えば、a lot ofは「ア/ロット/オブ」のようには発音されず、実際は「アロロブ」のように聞こえる。また、haveは通常は「ハブ」と発音されるが、have toが「ハフトゥ」になるなど、同じ語句が異なるように読まれることがある。
日本人が英語を聞き取れない最大の理由は、音の聞き分けができないからである。日本語と英語は音の構造が異なるにもかかわらず、英語を日本語のように対処しようとする結果、英語がまるで雑音のように聞こえてしまう。
ディクテーションは聞き取り能力を改善するトレーニングである。英文を書き取るには一言一句を正しく聞き取れないといけないから、ディクテーションによって音の正確な識別能力を養える。
ディクテーションの効果は世界的にも実証されている。イランでは初級レベルの英語学習者を2つにグループに分け、1つは教科書を使った通常のレッスンを行い、もう1つはレッスンに加えてディクテーションを行った。
100分間のレッスンを20回行った後、2つのグループを比較したところ、ディクテーションを行ったグループはそうでないグループに比べて、リスニング力の高い向上が見られた。
このように、ディクテーションは上級者だけでなく初級者にもおすすめの勉強法である。「早口の音声についていけず、英文を聞き取れない」といった悩みを持つ方に、ディクテーションはぴったりの学習法だ。
ディクテーションはdictationをカタカナ表記した語句である。dictateは「口述する」や「書き取らせる」の意味がある。
2. ディクテーションの正しいやり方
ディクテーションは英語の音声を紙に書き取るシンプルな勉強法だが、正しい手順でやらないと効果が出ない。
ディクテーションを行う5つの手順を紹介しよう。
手順1: 音声を用意する
ディクテーションを行うには英語の音声が必要である。
音声は市販の教材からYouTubeビデオまで、どのようなものであっても構わない。モチベーションを保って学習を進められるよう、興味のある話を選ぶと良いだろう。
音声のレベルは現在の英語力と同程度か、やや易しめなものを選ぶ。スムーズな書き取りが目的だから、あまり難易度の高い音声を使う必要はない。
参考までに、筆者はビジネス系の話題が好きなので、次のような起業に関するスピーチでよくディクテーションを行った。
手順2: 音声を聞く
音声を用意したら、ディクテーションを行う前に、2回から3回程度音声をリスニングする。目的は耳を慣らすためなので、内容の詳細まで理解する必要はなく、全体の雰囲気がわかれば大丈夫だ。
また、この時点で紙とペンを用意しておこう。音声はスピーカーよりイヤホンのほうが聞き取りやすいので、機材の用意も万全にしておきたい。
手順3: ディクテーションを行う
準備ができたら、実際にディクテーションを行う。
音声を再生しながら、英文を一言一句紙に書き取ってゆく。スペルは正確に書き、a/anなどの冠詞、ofやinなどの前置詞も聞き逃さないように注意をする。
ディクテーションは速記ではないから、書き取りそのものを急ぐ必要はない。音声はセンテンスごとに停止して、書き取りのペースを発話に合わせよう。
よほど簡単な文でない限り、一度ですべてを書き取るのは難しい。音声は2度・3度と再生して良いので、わかる箇所から文を構築する。
ディクテーションの例がこちらである。何度聞いてもわからない箇所は「…..」のように表記した。
ディクテーションを実際に行うと、短い音声でも大変な時間がかかることがわかる。30秒程度の音声を書くのに20分以上かかることもあるため、長いスピーチは書き取りの範囲を決めると良い。
手順4: 見直しをする
ディクテーションを終えたら見直しを行う。
市販の教材なら付属の英文スクリプト、YouTubeなら字幕機能をオンにして、内容の修正を行う。聞き取れなかった箇所を書き足し、スペルや文のミスがないかどうかチェックをする。
書き取りができない場合、その理由は単純に単語を知らなかったか、文法ミスが発生していることが多い。
例えば、Do you mind sharingをDo you mind shareと書いてしまう場合、-ingを聞き取れなかったのに加えて、「mindの後ろの動詞は-ingにする」という文法知識が不足していたと考えられる。
このように、ディクテーションは聞き取りだけでなく、文法への気付きを与えてくれる。
手順5: 次回学習への課題を決める
見直しが終わったら、次の学習への課題を設定しよう。
ディクテーションをはじめて行った方であれば、同じ音声を使った書き取りを繰り返し行うと良い。目安として、週に3回から4回程度のディクテーションを1ヶ月やると効果が実感できる。
ディクテーションに慣れてきた人は、別の音声を使っても良い。書き取りそのものに飽きたら、シャドーイングなどの他の勉強方法を取り入れるのも効果的だ。
ディクテーションを通じて単語力の不足を痛感した人は、単語帳を使った語彙学習に学習内容を変更しても良い。ある程度単語力がついてから書き取りを再開すると、英語力の成長を実感できるだろう。
ディクテーションが単なる「作業」とならないよう、1日の学習時間の上限を決めて、集中して取り組みたい。
3. ディクテーションのおすすめ教材
ディクテーションのおすすめ教材を紹介しよう。
3-1. 究極の英語ディクテーション Vol. 1
『究極の英語ディクテーション』は英語初心者向けのディクテーション教材。中学英語を中心とした易しい英文で書き取りの練習ができる。
本書は発音編、文法編、発展編の3つに分かれており、順番に学習をすると体系的なディクテーションが学べる。続編にあたる『CD付 究極の英語ディクテーション Vol. 2』も販売されているため、シリーズを通じて長く活用できる。
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3-2. YouTube動画
YouTube動画はディクテーションを行うのに適した教材だ。映画と比べて時間が短く、スマートフォン等で気軽に観られるので、時間や場所を選ばず練習ができる。
「How to motivate yourself to change your behavior」は「行動を変えるために自分自身にどうやって刺激を与えるか」を題材としたスピーチ。
YouTubeは他にも、大学の講義や著名人のスピーチなど興味深い内容が多いので、自分の好きなジャンルを探してやってみよう。
4. あえて知ってほしい注意点
ディクテーションは英語力向上に有効な方法であるが、学習を始める前に2つの注意点を知っておきたい。
1つ目は、ディクテーションは音を識別するトレーニングがゆえに、内容理解への意識が薄れる点にある。音の識別ができても、意味が理解できなければ実践的なリスニングにはならないため、ディクテーションである程度英語に慣れたら、シャドーイング(英語を聞きながら口ずさむ)や多聴(たくさんのコンテンツを聞く)など、別の勉強方法も取り入れていきたい。
2つ目は、ディクテーションは一言一句の聞き取りを強いるが、実際のリスニングは聞き取れない音を文脈や背景知識で補える点である。「絶対的に正確な聞き取りがリスニングに不可欠」といった、誤った先入観を持たないよう注意したい。
つまり、ディクテーションそのものは効果的な学習法だが、「ディクテーションだけ」では良いリスニング力は完成しない。ディクテーションはあくまで学習法の1つと捉え、自分の目的に合った様々な方法を組み合わせて行うことが望まれる。
総合的なリスニング勉強法は別記事で解説している。興味のある方はこちらもご参照いただきたい。
5. まとめ
この記事ではディクテーションの効果と実践方法を説明してきた。
内容をまとめると次のようになる。
- ディクテーションは音の識別能力を上げるのに効果的な学習法である。
- 難易度の高すぎない教材を準備し、事前に音声を何度か聞いて耳を慣らす。
- ディクテーション中は音声を止めたり、巻き戻しても良い。
- 見直しを行い課題を見つける。
- ディクテーションに慣れたら他の方法でも学習を行ってみる。
この記事を読んでディクテーションに興味を持ったら、ぜひとも実践をしてみてほしい。あなたの英語力は今日からでも変わる。
Good luck!
参考文献: The Effect of Frequent Dictation on the Listening Comprehension Ability of Elementary EFL Learners