英語の同化(assimilation)とは、ある音が近くの音の影響を受け、発音する位置や方法などが近づくことです。単語を一語ずつ知っていても、会話の中では違って聞こえる理由の一つになります。
たとえば ten bikes では、ten の最後の /n/ が、次の /b/ に備えて唇を閉じる [m] に近づくことがあります。綴りが変わるのではなく、口の動きが次の音を先取りするのです。この記事では、基本の仕組みを図で確認し、変化を聞き比べてからフレーズ・文へ進みます。
音声は、アメリカ英語をモデルにした学習用の合成音声です。各項目の後に練習用の間があります。男性・女性の両方を用意しています。変化を比較する音声では、説明する音の組み合わせを指定して作成しています。お手本の声の高さそのものをまねる必要はありません。
1. 同化は、隣り合う音の動きが影響し合うこと
このページでは、/ / は基本となる音の表記、[ ] は変化した発音の例に使います。矢印は説明のための対応で、誰もが同じ段階を順に通って発音するという意味ではありません。
同化の起こりやすさは、話す速さだけでなく、音の組み合わせ、語の境界、強調、話者によって変わります。「速いと必ず起こる」「丁寧な英語には起こらない」とは言えません。変化の少ない明瞭な発音も大切な選択肢です。
リンキング・脱落・弱形との違い
| 現象 | 注目する点 |
|---|---|
| 同化 | 近くの音に影響され、音の特徴が近づく、または音が融合します。 |
| リンキング | 単語の境目を滑らかにつなげます。必ず音が別の種類に変わるわけではありません。 |
| 脱落 | ある音が現れなくなります。 |
| 弱形 | 機能語などが、強調のない位置で短く弱い形になります。 |
実際の会話では、これらが同時に起こることがあります。聞こえ方が変わったものを、すべて同化と呼ぶのではありません。たとえば米語の /t/ が弾き音になる現象や、子音が脱落する現象には、それぞれの条件があります。
2. まずは変化の前後を聞き比べる
音声は次の4項目の順です。最初の形を「誤り」、次の形を「正解」と考えないでください。説明する音の違いに集中するための比較です。
| 順序 | 聞く場所 |
|---|---|
| 1. ten bikes — /n b/ を保つ | ten の最後で舌先を使う形 |
| 2. ten bikes — [m b] の例 | ten の最後から唇を閉じる形 |
| 3. I need you. — /d j/ を保つ | need の /d/ と you の /j/ が続く形 |
| 4. I need you. — [dʒ] の例 | 境目が一つの破擦音にまとまる形 |
男性音声
女性音声

聞き取れない音をカタカナで一語として覚えるだけでは、別の文で応用しにくくなります。「どの単語の最後と、次のどの音が接しているか」を確認してください。語の境目を見つけると、初めて聞く表現にも同じ考え方を使えます。
3. 同化の種類:方向・特徴・程度を分けて整理する
後ろから前へ影響する「逆行同化」
後ろの音が前の音に影響する場合を逆行同化と呼びます。ten bikes の /n/ → [m] は、後ろの /b/ と同じく唇を使う方向へ変わる例です。in class では、後ろの /k/ に備えて /n/ が舌の奥を使う [ŋ] に近づくことがあります。
前から後ろへ影響する「進行同化」
前の音が後ろの音に影響する場合を進行同化と呼びます。英語では、複数語尾の発音が books の /s/、bags の /z/ のように、直前の音の無声・有声に対応することが、その説明に使われます。
ただし、これは語尾の形を選ぶ、文法と結びついた規則です。会話中に自由に起こる同化とまったく同じものではありません。books の /s/ を、後ろに有声の音が来たら自由に /z/ にしてよい、という意味でもありません。boxes の語尾 /ɪz/ のように、摩擦音・破擦音の後では別の条件もあります。
| 音声の順序 | 語尾の確認 |
|---|---|
| 1. books | /k/ の後は /s/。語尾に母音を加えません。 |
| 2. bags | /ɡ/ の後は /z/。 |
| 3. boxes | /s/ の後には /ɪz/ の音節が加わります。 |
男性音声
女性音声
互いに影響してまとまる「融合同化」
隣り合う音が影響し合い、一つの音にまとまるものを融合同化と呼びます。meet you の /t j/ が [tʃ]、need you の /d j/ が [dʒ] になる場合が代表例です。/s j/ → [ʃ]、/z j/ → [ʒ] という変化もあります。/j/ は yes の最初の音で、「ジェイ」と読む音ではありません。
you や your が強く独立して読まれるときには、融合しない形もよく使います。変化の有無は、話者や場面によって異なります。
何が近づいたか:位置・方法・声の有無
同化は方向だけでなく、変化する特徴でも整理できます。/n/ → [m] なら、舌先から唇へと調音位置が変わり、鼻から息を出すという方法は保たれます。このほか、音の作り方である調音方法や、声帯の振動に関わる有声・無声も観点になります。英語の子音が、隣の音と常に有声・無声をそろえるという意味ではありません。
完全同化と不完全同化
影響を受けた音が隣の音と同じ種類になる場合を完全同化、一部の特徴だけが近づく場合を不完全同化と呼びます。/n b/ → [m b] では唇を使う点がそろいますが、鼻音と破裂音の違いは残るため、不完全同化です。
完全同化の例として、ten men の /n/ が次の /m/ の影響で [m] になる場合を考えられます。このとき隣り合う二つの鼻音は同じ種類になります。ただし、実際には一続きの唇の閉鎖として現れることがあり、同じ音を二回はっきり言うとは限りません。「逆行」と「不完全」は別の観点なので、同じ例に両方の名前を使えます。
4. 基本の組み合わせを5つ練習する
音声は、以下の変化を含む学習用の形を上から順に読みます。まず元の綴りを確認し、次に変化する境目へ注意を向けてください。
1. green bag
緑色のバッグ//n b/ → [m b]
練習のポイント:green の最後で早めに唇を閉じ、鼻から息を出したまま bag へつなげます。
2. ten players
10人の選手//n p/ → [m p]
練習のポイント:players の /p/ に備えて唇を閉じます。余分な母音を入れません。
3. in class
授業中に//n k/ → [ŋ k]
練習のポイント:舌の奥を使う /k/ に備えます。語末に日本語の「グ」を足す練習ではありません。
4. meet you there
そこであなたに会う//t j/ → [tʃ]
練習のポイント:境目が一つの破擦音にまとまる例です。you の母音へ続けます。
5. need you now
今あなたを必要とする//d j/ → [dʒ]
練習のポイント:meet you と比べ、有声の破擦音になる点を聞きます。
男性音声
女性音声
5. フレーズで練習:短いまとまりを5つ
1. one more minute
あと1分
練習のポイント:one の /n/ が、more の /m/ に近づく形を練習します。唇の閉鎖を途切れさせすぎません。
2. in good condition
よい状態で
練習のポイント:in の /n/ が、good の /ɡ/ に備えて [ŋ] に近づく形です。
3. meet your team
あなたのチームに会う
練習のポイント:meet と your の境目 /t j/ が [tʃ] にまとまる例です。
4. need your name
あなたの名前が必要である
練習のポイント:need と your の境目 /d j/ が [dʒ] にまとまる例です。
5. as you know
ご存じのとおり
練習のポイント:as と you の境目 /z j/ が [ʒ] にまとまる例です。声を保った摩擦音を聞きます。
男性音声
女性音声

まずは変化した音を聞いて元の単語が分かることを目標にしましょう。発音するときは、意味が伝わる速さで、口の動きを少し滑らかにつなぐ程度から始めます。速く崩して話すことを目標にする必要はありません。
6. 文で練習:会話で使える5文
1. Put it in my bag.
それを私のバッグに入れてください。
練習のポイント:in my の /n m/ → [m m] に注目します。put、bag の意味も明瞭に保ちます。
2. We have ten players.
私たちのチームには選手が10人います。
練習のポイント:ten players の /n p/ → [m p] を、文のリズムの中で練習します。
3. They are in class.
彼らは授業中です。
練習のポイント:in class の /n k/ → [ŋ k] に注目します。
4. Nice to meet you.
お会いできてうれしいです。
練習のポイント:meet you の /t j/ → [tʃ] を聞きます。融合しない読み方でも構いません。
5. I need your help.
あなたの助けが必要です。
練習のポイント:need your の /d j/ → [dʒ] を練習し、help を明瞭に伝えます。
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女性音声
7. gonna などを、同化だけで説明しすぎない
会話では going to が gonna のような短い形で発音されることがあります。こうした短縮には、母音の弱まりや子音の変化などが組み合わさっています。途中の段階を一つの固定した順序で暗記するより、文法と場面の両方を確かめましょう。
I’m going to call her. のように、be going to の後に動詞が続く予定・予測の表現では gonna が使われます。一方、I’m going to the museum. のように「ある場所へ行く」という移動を表す to を、そのまま gonna に置き換えることはできません。短縮形の詳しい練習は、関連する記事で扱います。
仕上げの練習とセルフチェック
- 同化と、リンキング・脱落・弱形の違いを説明できる。
- 変化する語の境目と、影響を与える音を見つけられる。
- /n/ が [m] や [ŋ] に近づいても、元の単語へ結びつけて聞ける。
- 融合した形だけを唯一の正解にせず、明瞭な発音も使える。
音声を止め、練習した表現を場面に合わせて発音します。録音できる場合は、お手本と交互に聞き、次に直す点を一つ選んでください。
関連する発音も学ぶ
/m/・/n/・/ŋ/ の口の動き、/tʃ/・/dʒ/ の作り方も併せて学ぶと、変化の理由を理解しやすくなります。
弱形の仕組みと音声練習も一緒に学ぶと、強く読む箇所との違いをつかみやすくなります。
参考資料
- John Coleman — Levels, Rules and Processes(University of Oxford)
- John C. Wells — progressive assimilation?(音声学者本人による解説)
- British Council — Connected speech, part 2(脱落・リンキングとの区別)