動名詞は動作が行われている様子を-ing形を使って名詞化したものであり、To不定詞は動作に向かっている様子をToを使って名詞化したものである。
…と言葉で説明しても、なかなか簡単に理解できないのが英文法の難しいところだ。
そこでトイグルでは、動名詞・不定詞の使い方をイラストを用いてわかりやすく説明しよう。文法の持つニュアンスを直感的に理解いただけるよう、専門用語を使わず平易な言葉で解説していきたい。
*目次
1. 動名詞と不定詞の違いが覚えられない2つの理由
動名詞と不定詞の説明に入る前に、日本人がこれらの文法を覚えられない2つの理由を明らかにしよう。
理由1: 日本語訳で理解しようとするから
ほとんどの日本人が、動名詞・不定詞を日本語訳で理解しようとする。しかし、動名詞・不定詞は翻訳で意味を掴みづらく、かえって混乱することが多い。
例を見てみよう。
- 動名詞: I forgot closing the window. (私は窓を閉めたことを忘れた)
- 不定詞: I forgot to close the window.(私は窓を閉めることを忘れた)
動名詞は「閉めたこと」、不定詞「閉めること」になっているが、日本語ではその違いが微々たるものにしか見えない。また、両方とも「〜のこと」の意味だが、どうやって使い分けるのだろうか?
このように、日本語訳では動名詞・不定詞の持つニュアンスが伝わってこない。
理由2: 分類を学ぶから
不定詞に関しては、その分類を学ぶことが多い。例を見てみよう。
- 名詞的用法: It is good for you to go to the gym everyday. (ジムに毎日行くことは良いことだ)
- 形容詞的用法: I want you to go to the gym. (私はあなたにジムに行って欲しい)
- 副詞的用法: I study hard to go to the gym. (ジムに行くために私は研究を頑張る)
これら3つの分類は、言語学観点から見れば正しい。しかし、我々が英語を読んだり話したりする場面で、分類に関する知識を使うことがあるだろうか?
トイグルでは、英文法は形が同じであればそこには共通した意味があると考える。先の例なら、to go to the gym(ジムに行く)という同じフレーズが使われている以上、そこには共通したニュアンスがあるはずだ。
以上、非効率な勉強法を明確にした上で、動名詞と不定詞の用法を見ていきたい。
2. 動名詞の覚え方
まず、動名詞の覚え方を説明しよう。
2-1. 動名詞の基本イメージ
トイグルでは、動名詞を次のように定義している。
動名詞: 動作が行われている様子を概念化し、名詞として使う用法。動詞の-ing形を用いる。
(トイグル)
定義だけでは分かりにくいので、イラストを使って解説したい。
まず、動名詞に限らず英語で-ing形が使われるときは、「動作が行われている最中」の基本イメージがある。
例えば、eating(食べている)であれば、食べ始めから食べ終わりまでの一連のプロセスが、動作の最中となる。
動名詞は「動作が行われている最中」の様子を状態として捉えたものとなる。そのため、「〜のこと」の意味で名詞として使われる。
例を見てみよう。
- working: 働いている最中⇒働くこと
- drinking: 飲んでいる最中⇒飲むこと
- smoking: タバコを吸っている最中⇒タバコを吸うこと
動名詞が使われれば、そこには多かれ少なかれ、動作が行われている様子がニュアンスとして含まれるのだ。
2-2. 動名詞の用法
動名詞の実際の用法を確認していこう。
冒頭で取り上げた例をもう一度使っていきたい。
- I forgot closing the window. (私は窓を閉めたことを忘れた)
まず、closing(閉めること)は、動詞closeに-ing形がつくことで動名詞となっている。閉める動作のはじまり、途中、完了までの一連のプロセスがニュアンスとして含まれる。
したがって、「窓を閉める一連の動作を行ったという事実」を忘れたわけなので、「私は窓を閉めたことを忘れた」の意味になる。窓は閉まっているが、単に話し手の記憶にないだけである。
2-3. 動名詞の時制
動名詞にはbe動詞がついていないため、これ自体に時制の概念は含まれない。動名詞が含まれた文章の時制は、基本的にその文の動詞に一致する。
先の例をもう一度見てみよう。
- I forgot closing the window. (私は窓を閉めたことを忘れた)
動詞forgotが過去形のため、これは過去について話している文章だ。したがって、closing the window(窓を閉める)という行為も、過去に行われた事実と解釈できる。
文章の主たる動詞が現在形なら動名詞の行為も現在、過去形なら動名詞の行為も過去のものとなる。
2-4. 動名詞と相性の良い単語リスト
英語の動詞は意味的に、To不定詞よりも動名詞が好んで使われることがある。以下、動名詞と相性の良い単語リストを紹介しよう。
admit(認める) | imagine(想像する) |
consider(考える) | mention(述べる) |
deny(否定する) | recall(思い出す) |
describe(描写する) | suggest(提案する) |
adore(大好きである) | like(〜が好き) |
enjoy(楽しむ) | love(〜を愛する) |
mind(気にする) | resent(憤慨する) |
keep(保持する) | finish(終わらす) |
miss(逃す) | stop(止める) |
postpone(延期する) | practise(練習する) |
いくつか例文を紹介しよう。
- My brother denied drinking coffee. (私の兄はコーヒーを飲むことを拒んだ)
- I enjoyed working with you. (あなたと働いたことは楽しかったです)
- Do mind giving me advice about it? (それに関するアドバイスをいただけないでしょうか?)
3. To不定詞の覚え方
続いて、To不定詞の覚え方を説明しよう。
3-1. To不定詞の基本イメージ
トイグルでは、To不定詞を次のように定義している。
To不定詞: 動作に向かっている様子を概念化し、名詞として使う用法。動詞の前にtoをつける。
(トイグル)
こちらも定義だけでは分かりにくいので、イラストを用いて解説しよう。
まず、前置詞・不定詞に限らずtoという語句には「対象に向かう」の基本イメージがある。
例えば、to read(読むこと)であれば、「読む」という動作に対して気持ちが向かっている、つまりこれから読もうとしている様子を表している。
To不定詞は「動作に向かっている様子」を状態として捉えたものとなる。そのため、「〜のこと」の意味で名詞として使われる。
例を見てみよう。
- to work: 働く動作に向かっている⇒(これから)働くこと
- to drink: 飲む動作に向かっている⇒(これから)飲むこと
- to smoke: 吸う動作に向かっている⇒(これから)吸うこと
To不定詞が使われれば、そこには多かれ少なかれ、動作に向かっている様子がニュアンスとして含まれる。
※toは前置詞で使われても「動作に向かっている」のイメージが使われる。I’ll go to Shinjyuku.(新宿に行きます)など、目的地を表す場面でtoが使われるのは、まさにこの基本イメージが生きているからである。 |
3-2. To不定詞の用法
To不定詞の実際の用法を確認していこう。
冒頭で取り上げた例をもう一度使っていきたい。
- I forgot to close the window.(私は窓を閉めることを忘れた)
まず、to close(閉めること)は、動詞closeにtoがつくことで、to不定詞となって使われている。「閉める」という動作に向かっている状態が、to closeにニュアンスとして含まれる。
したがって、「窓を閉めるという状態に向かう事実」を忘れたわけなので、「私は窓を閉め忘れた」を意味するのだ。窓はまだ閉まっていない。
3-3. To不定詞の時制
To不定詞そのものには時制の概念が含まれない。しかし、「対象に向かう」という基本イメージから、To不定詞にはその時点で未来に向かっている様子が伺える。
先の例をもう一度見てみよう。
- I forgot to close the window.(私は窓を閉めることを忘れた)
forgotはforget(忘れる)の過去形のため、これは過去について話している文章だ。時間軸としては、その過去の時点から見た未来に行うはずだった「窓を閉める」という行為を忘れた、と解釈できる。
3-4. To不定詞と相性の良い単語リスト
英語の動詞は意味的に、動名詞よりもTo不定詞が好んで使われることがある。以下、To不定詞と相性の良い単語リストを紹介しよう。
agree(同意する) | choose(選ぶ) |
decide(決定する) | expect(期待する) |
hope(望む) | intend(意図する) |
learn(学ぶ) | mean(〜するつもりである |
offer(提案する) | plan(計画する) |
promise(約束する) | refuse(断る) |
fail(失敗する) | manage(管理する) |
pretend(よそおう) | tend(〜しがちである) |
want(〜が欲しい) | ask(尋ねる) |
encourage(勇気づける) | – |
いくつか例文を紹介しよう。
- We agreed to work together. (私たちは一緒に働くことで同意した)
- They decided not to go out tonight. (彼らは今夜外出しないことに決めた)
- She asked me to explain. (彼女は私に説明するよう求めた)
agree, decide, askなど、どの動詞も未来への行いに対する何かを示す。そのため、「行為に向かっている」を意味するTo不定詞と相性が良いのだ。
※イラストのように、動詞が目的語を必要としないケースもある。その場合でも、to不定詞の「行為に向かっている」の基本イメージに変わりはない。 |
4. 動名詞とTo不定詞の使い分け
ここまで、動名詞とTo不定詞の基本イメージを確認してきた。
しかし、理論を覚えても、実際に英語を使う場面で動名詞とto不定詞の違いに困ることは多い。そこで、日本人が間違えやすい例を基本イメージに当てはめながら、その使い分け方を検証していこう。
4-1. stop doingとstop to do
stopは「止める・止まる」を意味する動詞だ。stopはstop doingのように動名詞を使う場合と、stop to doのように不定詞を取る場合の2通りが可能だが、それぞれ解釈が異なる。
- I stopped drinking water. (私は水を飲むのをやめた)
- I stopped to drink water. (私は水を飲むために立ち止まった)
まず、動名詞には「〜している最中」の基本イメージがある。
drinking(飲むこと)は飲む動作の始まり、途中、完了までの一連のプロセスがニュアンスとして含まれる。
したがって、stop(やめる)の対象は「水を飲むという一連の動作」になるため、「私は水を飲むのをやめた」を意味する。
一方、To不定詞には「対象に向かう」の基本イメージがある。
to drink(飲むこと)は、「飲む」という動作に向かっている状態がニュアンスとして含まれる。
動作に向かっている以上、水はまだ飲んでいない。stopの対象となる行為は存在せず、stopの意味は「やめる」ではなく「止まる」になる。
したがって、「私は水を飲むために立ち止まった」の意味となるのだ。
4-2. skiingとto ski
skiは動詞で使うと「スキーをする」を意味する。
次の2文のうち、「私はスキーをしに山にいったが、風が強すぎてできなかった」を正しく書いているのはどちらだろうか?
- I went skiing in the mountain, but I couldn’t because it was too windy.
- I went to the mountain to ski, but I couldn’t because it was too windy.
正解はTo不定詞を使った2つ目の文章となる。これも動名詞とTo不定詞のイメージを使うことで説明できる。
*1つ目の文章は前半と後半で論理矛盾が起こる
1つ目の文章は、前半部分でI went skiing in the mountain(私は山にスキーに行った)と述べている。
skiingはスキーをする動作の始まり、途中、完了までの一連のプロセスを表すため、I went skiingは実際にスキーを行ったニュアンスを含む。
しかし、後半部分でbut I couldn’t because it was too windy. (しかし、風が強すぎてスキーができなかった)と述べており、これは前半の意味と矛盾してしまう。
したがって、この文章を聞いた相手は「実際にスキーはしたの? しなかったの?」と困惑してしまう。適切な文章とは言えないだろう。
*2つ目の文章は正しく状況を伝えている
2つ目の文章は、前半部分でI went to the mountain to ski(私は山にスキーに行った)と述べている。
to skiはスキーという動作に向かっている様子を表す。行為に向かっているだけでは、まだスキーは行われていない。
そして、後半部分でbut I couldn’t because it was too windy. (しかし、風が強すぎてスキーができなかった)と述べており、これは前半の意味と矛盾が生じない。
つまり、「私は山に行き、気持ちはスキーという行為に向かい合っていた。しかし、風が強すぎてスキーができなかった」と解釈できる。
聞き手も「スキーをしに行ったものの、できなかったんだな」とスムーズに理解できるだろう。
5. まとめ
当エントリーでは、動名詞と不定詞の違いを、例を挙げながら検証してきた。
多くの例で見られたように、英語は翻訳をすることで意味がわからなくなってしまう。そのため、基本イメージを使って英文法の本質的な機能を理解できるよう、説明してきた。
動名詞と不定詞は会話・文章問わず、英語で頻繁に使われる。その違いを正しく認識し、使える文法習得を目指していこう。
*当記事を読んでもっと知りたいと思った方は、次のエントリーも参考にしていただきたい。
- 英文法の解説一覧はこちら⇒英文法まとめ|暗記に頼らず感覚で理解できる英語文法のすべて
- TOEIC勉強法はこちら⇒現役TOEIC講師が教える成果が120%出る勉強法
Good luck!
凄い!!!
不定詞と動名詞クリアになりました!
モヤモヤしていた部分で適当に今まで使っていたのでスッキリしました!
トイグルさんには、もう何度も不安定だった英語をクリアにして頂いています。
ありがとうございます!!
>うらら様
お褒めのコメント、ありがとうございます。
お役に立てたようで、書き手として大変嬉しく思います。
今後ともトイグルをよろしくお願いします。
わかりやすくてよかったです。
受験生の私としてはこの問題が難しかったので
解決できてとてもうれしく思います。
本当にありがとうございます。
ありがとうございます!
>ほごしゃばれー様
お褒めのコメント、ありがとうございます。
お役に立てたようで光栄です:)
毎日とても重宝しております。
質問なのですが、
3-4. To不定詞と相性の良い単語リスト
の中にexpectが2つあるのですがこれは何か意味があるのでしょうか?
>ぐてーり様
いつもトイグルを御覧いただきありがとうございます。
申し訳ありません、ご指摘の点は誤植でした。
先ほど訂正いたしました。
質問なのですが、
I stopped to drink water.の文章で、「水を飲むために立ち止まった」という解釈の他に、「水を飲みに向かうことをやめた → (水を飲もうと思っていたけど)水を飲むことをやめた」つまり、水は飲んでいない。という解釈も可能なのでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
英文は状況によって異なる解釈になることがありますが、通常は「立ち止まった」の解釈になるのではないかと考えます。
例文で「went skiing」というのがありましたが、wentの後にtoを付けずに〜ingという言い方はあるのでしょうか?
goは自動詞だから後ろには必ず前置詞が入るものと思ってきましたが、実はこんな言い方もできるのだとすると、ちょっと動揺が広がってきました…どなたか教えてください!
>みっつさん
コメントありがとうございます。
goは通常はtoなどの前置詞を伴うことが多いですが、shopping, swimming, skiingなど-ingを使う動詞と共に使うことも可能です。
e.g. I need to go shopping this afternoon.(私は午後に買い物に行く必要がある)
これ以外の場合は、goは前置詞と共に使うことが多いです。
ご参考まで…